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テクノロジー EV・日本の大逆襲

《EV・日本の大逆襲》なぜ欧州で韓国EVは人気なのか=酒井元実

欧州で躍進のヒョンデ、キア

 拡大する欧州のEV市場。英国ではテスラより手が出しやすく、性能面でも優れたクルマとして韓国製EVが人気となっている。(特集 EV・日本の大逆襲はこちら)

「安くてよく走るクルマ」=酒井元実

 2030年にガソリン車とディーゼル車の新車販売禁止を控える英国では、22年に入り電気自動車(EV)の普及がさらに加速している。この英国の「EV大増殖」には、韓国のヒョンデ(現代自動車)とキア(起亜)の韓国製EVの躍進がある。

 英国では昨年、米テスラ「モデル3」が全乗用車でのモデル別販売ランキングで2位に入り込むなど、本格的な“EV元年”を迎えた。ただし、人気のテスラ車は、同程度サイズのガソリン車と比べ車両価格が約3倍と安いとはいいがたい。一方、ヒョンデやキアの車両価格は、テスラの「モデルY」の6〜7割程度で、「EVに買い替えたいが、テスラは高い」と購入を見送っていた環境意識の高い30〜40代を中心にヒットしたのだ。筆者が住むロンドン市内も韓国製EVを見かける機会が増えている。

 英国でEVが急速に普及している理由には、税制上の優遇などの面も大きい。例えば、企業が保有する社用車に関する規定だ。従業員が通勤や自宅からの直行直帰を含めた私的に利用する場合、社有車は「現物給付」と見なされ、課税対象となる。

 現物給付を受けると、所得の一部として車の価値が評価されることになる。車両の評価額の方法として、英歳入関税庁(HMRC)は、02年会計年度から、二酸化炭素(CO2)排出量を基準に税率を定める課税方式を採り入れている。この課税方式では、テスラ「モデルY」と同程度のガソリン車モデルだと税率は30%近いが、EVや燃料電池自動車(FCV)といった「全くCO2を出さないクルマ」は税率2%と非常に低く設定されており、EVを選ぶ動機になっている。

 EVのなかでも韓国製EVが高い支持を集めている大きな理由は、価格競争力にある。筆者が調べた法人向け社用車リースの価格では、テスラの「モデルY」が1日当たり40ポンド(3年リースの場合)に対し、キア製の廉価版EV「e-NIRO」は同20ポンド弱と半値まで下がる。

 車両のグレードが大きく違うので安くて当然、といえばそれまでかもしれないが、少なくとも「EVは高価だ」という先入観を打ち砕くのに十分な数字だろう。

 欧州の人々が「韓国製EV」に抵抗がない、という理由には車両価格、税制上の優遇以外の歴史的な背景も関係している。

 そもそも欧州では韓国製のクルマが高い評価を得ており、欧州のコンパクトカーのセグメントでは韓国車のシェア占有率は極めて高い。これは、韓国自動車メーカーが、労働者の賃金水準が低めながらも、技能レベルが高い旧東欧諸国に工場進出を積極的に行ったことに由来している。

旧東欧諸国に工場

 ヒョンデはチェコ、キアはスロバキアへとそれぞ…

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