マーケット・金融

《ドル没落》金価格をさらに押し上げる米FRBの「時限爆弾」=亀井幸一郎

1キログラムの金地金。時価は日本円で約760万円(2022年3月、ハンガリー・ブダペスト) Bloomberg
1キログラムの金地金。時価は日本円で約760万円(2022年3月、ハンガリー・ブダペスト) Bloomberg

「金」高騰の真因

 金利がつかないゴールドは利上げ局面では通常は値を下げるが、今回は相場を維持。法定通貨への不安が背景にある。

ドルの信認低下が浮き彫りに=亀井幸一郎

 米連邦準備制度理事会(FRB)がタカ派に転じた中で、ニューヨーク金先物価格(NY金)は、5月末時点で1トロイオンス(約31 グラム)=1800ドル台半ばの高値を維持している。FRBによる強硬な引き締め策はドル高と米長期金利の上昇につながり、金利がつかない金の市場には強烈な向かい風になるのが通常だ。NY金がしぶとく1800ドル台半ばを維持し、値を下げないのはなぜだろうか。

 NY金が2020年8月に2000ドルを超え過去最高水準を更新した背景には、同年春に新型コロナウイルスの感染拡大があり、経済のデフレ化を恐れたFRBによるドル供給の歴史的な規模とピッチの速さがあった。FRBのバランスシート(総資産)は短期間に2倍の9兆ドルに迫る空前の規模となった。ドルの価値を急激に薄める政策であり、長期の投資家ほど「価値の保蔵手段」としての法定通貨ドルの機能に疑いを抱くことになった。それは金市場への資金移動として表れ、過去最高値の更新(20年8月7日2089・20ドル)につながった。

 ドル供給の急増は、セオリー通り急激なインフレを招いた。米消費者物価指数(CPI)の前年同月比上昇率は21年の初夏以降に急上昇し、今年3月に8・5%、4月には8・3%と約40年ぶりの高水準で推移している。

 インフレは一部の富裕層を除く大半の家計を直撃する。政治的圧力を感じたであろうFRBは昨年末から急激にタカ派姿勢に転じた。3月中旬に2年ぶりにゼロ金利を解除した後、すでに0・75~1%に引き上げられた政策金利(フェデラルファンド〈FF〉金利)は、6、7月にもそれぞれ0・5%の利上げが予定されている。また、6月にFRBのバランスシートの削減(QT)が月475億ドル(約6兆円)で始まり、3カ月後の9月に月950億ドルの上限へと一気に引き上げられる。前回、17年10月にスタートしたQTは巡航速度(月500億ドル)に達するまで1年かけた経緯を振り返れば、圧縮ペースの速さが際立つ。

 景気を熱しも冷やしもしない金利水準を「中立金利」と呼びFRBは2・5%前後の水準に置いているが、パウエル議長は、必要があればこの水準を超えることもちゅうちょしないと5月中旬に発言している。インフレ抑制のためには、景気を冷やすこともいとわないというわけだ。

 冒頭で示した、金が高値を維持する理由として、市場が足元のインフレを高止まりすると見ていることが挙げられるだろう。FRB…

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