《まだまだ伸びる半導体》メタバースにカーボンニュートラル、技術が需要を拡大=津田建二
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どうなる?半導体需給
AIやIoT、5Gなど向けの需要の増大だけでなく、これらの組み合わせによって半導体市場はさらに一段の拡大が見込まれる。
それでも聞こえる「不足」の声、2030年まで年率7%成長=津田建二
世界の半導体市場は2021年に前年比25%成長したが、今年もさらに2ケタ成長になるとの上方修正を行う市場調査会社が相次いでいる。米ICインサイツは今年6月にそれまでの同4%から13.7%へ、米ガートナーも4月、9%から13.6%へと相次いで上方修正した。
かつては半導体の集積度が2年で2倍に増加する「ムーアの法則」が限界に来ると半導体の成長は止まると見られていた。しかし、二次元的な集積が行き詰まっても、三次元化へと縦方向に積み重ねることで半導体の集積度はまだまだ上がる。そして半導体を製造する装置や製造に必要な材料も成長する。
しかし、材料は地政学上のリスクもある。今年2月24日から始まったロシアによるウクライナ侵攻は、ロシアとウクライナで生産する希ガスのネオンや、水素センサーやMRAM(磁性体を使った半導体メモリー)に使われる貴金属のパラジウムの供給に影響を与える可能性がある。
特にネオンガスは空気中にごく微量含まれるが、このガスはチップの最小寸法が110ナノメートル(ナノは10億分の1)以下で使われるフッ化クリプトンやフッ化アルゴンのエキシマレーザー(短波長レーザー光を発振させる装置)の濃度調整に使われる。ネオンガスはロシアの鉄鋼生産の副産物として生成され、それをウクライナで半導体用に精製し、世界各地に送られるといわれている。
半導体IC(集積回路)の70%程度が110ナノメートル以下のプロセスなので、紛争の長期化で備蓄がなくなれば、その影響は大きい。
工場の新設・拡張続々
現状の半導体ICは、調査会社によると21年10~12月には45日という従来の在庫レベルに戻っている。そして在庫日数は、そろそろ50日レベルになる。それにもかかわらず、半導体不足の声が依然として聞こえる。
一つには今回の半導体不足を引き起こした自動車メーカーの在庫レベルが上がったからだ。従来の自動車メーカーは在庫を持たない「カンバン方式」を世界中の自動車メーカーが採用していたが、今回の教訓で3~4カ月は持つようになった。それでもまだ不安で、1年分を持つティア1サプライヤー(メーカーに直接納入する1次サプライヤー)も出てきた。
もう一つは、パソコンやスマートフォンなどは適正在庫になっているが、それ以外の産業用や医療用、航空・宇宙、通信、家電などB2B(企業向け)ビジネス分野への供給は後回しに…
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週刊エコノミスト
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