《まだまだ伸びる半導体》米中ハイテク摩擦下に中国が輸入を続ける深い理由=津村明宏
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中国との向き合い方
米国は先端装置や材料の中国への輸出を規制してはいるが、巨大な市場として強く結び付いている。
完全「国産化」はまだ遠く、米国は製造装置の輸出継続=津村明宏
米中のハイテク摩擦が激化の一途をたどる中にあっても、中国は半導体の増産投資を積極果敢に推進している。安全保障の観点から、米国はAI(人工知能)やスーパーコンピューターなどに不可欠な最先端のロジック半導体(論理回路)の量産を防ぐため、米国は中国に対して回路線幅14ナノメートル(ナノは10億分の1)プロセス以降の微細化の実現に不可欠な先端の製造装置や材料の輸出を禁じている。
これに対して中国は28ナノメートル以前の従来型のプロセス、いわゆる「レガシー」といわれる製造技術に関して、完全な国産化を目指して研究開発を推進しつつ、200ミリメートル(約8インチ)ウエハーを用いた量産の拡大、シリコンに続いてSiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)といった化合物半導体の事業化に取り組んでおり、とにかく「国産化できるところから自前で取り組む」という姿勢を近年いっそう明確にしている。
ただし、中国が独自技術だけで半導体の製造をすべてまかなうのは、現状ではまだ非常に難しい。欧米や台湾といった半導体先進国に比べて製造技術、材料技術の水準は大きく劣っており、依然として海外から半導体そのものや製造装置、各種の電子材料を輸入しなければ量産することが難しく、増産体制を敷くこともできない。
「投資があるところに風が吹く」ことを考えれば、旺盛な増産意欲を背景にして、長期的には中国ローカル企業の技術力が向上し、一定程度の装置や材料に関しては国産化を実現できるだろう。
しかし、欧米やアジアの先端企業も同時に半導体製造技術のさらなる進化を急ぐ中、中国がそれを追いかけ、追いつくのは至難の業であり、国産化の実現はまだかなり先の話になる。
日本の低い対中比率
中国税関総署の統計によると、21年における中国の半導体輸入額は20年から24%増加して4500億ドル(約60兆円)を突破した。また、半導体製造装置の輸入額は20年の254億ドルから34%増加して340億ドルとなり、日本円にして1兆円近く増えた。
これは、中国が引き続き半導体のレガシー分野で旺盛な増産投資を進めていることを示すとともに、依然として国産技術だけではすべてをまかなえず、海外の技術に大きく依存していることを如実に示している。そして同時に、米中ハイテク摩擦の最中にあっても、レガシー分野に関しては引き続き各国から製造装置を購入できていることも表している。
図1は、18~21年の4年間について、主要半導体製造装置メーカーの中国向け売上高比率を四半期ごとに示したものだ。世界最大の半導体製造装置メーカーである米アプライドマテリアルズは、16四半期の平均で中国向けが売上高の31.7%を…
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週刊エコノミスト
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