《まだまだ伸びる半導体》中国ファーウェイが新興EVメーカーに照準=野辺継男
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米国の制裁でも……
米国の制裁を受けても中国の半導体産業は視点を変え、したたかに粘り強く成長を遂げている。
侮れない中国半導体の実力=野辺継男
トランプ政権下の2018年8月、米国国防権限法2019が成立し、19年5月に中国通信大手のファーウェイ(華為技術)に対する事実上の輸出禁止制裁措置が発動された。「ファーウェイに米国技術が関わる半導体やソフトを売らない。ファーウェイ製品を買わない、使わない」という「ファーウェイ・バン」が始まった。
これにより20年末、ファーウェイはスマートフォンのサブブランド「Honor(オナー)」を売却。それでも、任正非CEO(最高経営責任者)は「スマホを作り続ける」と宣言し、21年8月の時点でも「また王座の地位に返り咲くつもりだ」との意向を明らかにした。
しかし、21年には収益源だったスマホ事業は激減し、売り上げは記録的に厳しい年となった。しかし、ファーウェイはデバイス事業を新たなIoT(モノのインターネット)端末など新しい領域に広げ、インフラ系ビジネスも強化し、21年の売上高が6368億元(約12兆2000億円)と前年比約3割落としながらも、純利益は1137億元と7割以上伸ばした。
5日間で6000台
この間の19年1月、ファーウェイは、北京汽車集団傘下のEV(電気自動車)部門、BAICブルーパーク・ニュー・エナジー・テクノロジー(BAICブルーパーク)と、スマートEVの開発で包括協定に調印し、BAICブルーパークのEV「アークフォックス(極狐)」に、ファーウェイの次世代スマートEV技術を搭載することに合意している。また20年11月には、「ドライブワン」というEV用駆動技術も発表している。
そして、21年4月の上海モーターショーで、「アークフォックスαS HBT(ファーウェイ・ブルーパーク・トゥギャザー)」というバッテリーEV(BEV)を発表した。
このクルマは、ファーウェイのドライブワン技術や、スマホ向け半導体チップ「Kirin」を大きく発展させた半導体システムを搭載している。ファーウェイは自動運転とEVに1000億円の研究開発投資を決め、重慶長安汽車、広州汽車集団といった中国の代表的な自動車会社とも提携した。
21年初めには、重慶小康工業集団傘下の新興EVメーカー「セレス(賽力斯)」とパートナーシップ契約を締結し、セレス・ファーウェイSF5というBEVをファーウェイの店舗で販売開始。両社は共同で「AITO」と呼ばれる高級自動車ブランドも立ち上げ、21年12月には「AITO M5」という高級プラグインハイブリッド車(PHV)を発売し、昨年12月末の販売開始後5日間で受注6000台を超えたという。
ファーウェイはEVで急成長するXPeng(小鵬汽車)とも「半導体とソフトウエアでEVをスマート化する」提携を結び、クアルコムやエヌビディ…
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週刊エコノミスト
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