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LNG調達先の確保に出遅れた日本=橋本裕

欧州に流入する世界のLNG

 今後も価格高騰の公算が大きい天然ガスの確保で日本は出遅れている。

中国が北米産を大規模購入=橋本裕

 ロシアによるウクライナ侵攻は、世界の天然ガス市場にどのような影響を与えたのか。一つは物流面の変化だ。

 米国産を中心に欧州向けの液化天然ガス(LNG)流入が増加した。特に2022年第1四半期は、米国産LNGの世界市場に向けた出荷量が2200万トンに達し、1四半期に一国が輸出した数量としては、過去最大となった。米国産LNGの出荷先に占める欧州連合(EU)と英国を合わせたシェアは65%に拡大しており、20年、21年の約3割前後からほぼ倍増している。

 こうした状況は、他の市場、特に世界の2大LNG輸入国である日本と中国のLNG輸入量減少につながっている。

 22年1~4月の日本のLNG輸入量は、前年同期比8%減少の2597万トンで、米国産LNGの輸入は160万トンと、前年同期と比べてほぼ半減している。同じ期間の中国のLNG輸入量は、前年同期比17%減少の2159万トンで、米国産LNG輸入量は、前年同期比70%超減少(160万トン)の60万トン程度にとどまった。日本や中国の米国産LNG輸入の減少分の多くが、欧州にシフトしていると思われる。

価格は過去最高

 天然ガスの欧州の「脱ロシア依存」が、どこまで進んでいるのか推計してみた。ウクライナ侵攻後の22年3~5月に、EUと英国がロシア以外から輸入したLNGは、前年同期比33%増(約600万トン増)の2500万トンで、ロシアからの輸入(LNGとパイプライン)は、同38%減(約1300万トン減)の2100万トンだった。

 EU域内には、ガス需要が減少する春から秋にガス在庫を積み上げ、需要が増加する冬にガスを出荷するなど、需給変動の調整に重要な役割を果たす、天然ガスの地下貯蔵設備が多数あり、全体の容量はLNG換算で7000万トン分にも達する。

 21年夏から現在に至るまで、欧州と世界の天然ガス価格は史上まれにみる高水準だが、その背景には、ウクライナ侵攻だけでなく、地下貯蔵設備の貯蔵水準が、冬の需要期に入る21年10月末時点で77%と、例年同時期の85~95%に比べ、顕著に低くなっていたことも影響している。

 しかし、3月以降、LNG輸入を拡大したことで、EUのガス地下貯蔵設備の充填(じゅうてん)率は、貯蔵可能容量に対して、3月末の26%から5月末時点で47%に増加した。これは前年同期を25%、LNG換算で約750万トン上回る水準だ。

 次に、ウクライナ侵攻によるガス価格の影響を見てみたい。

 欧州の天然ガス価格やアジアのス…

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