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食料高騰はロシア資源戦略の勝利なのか?=吉田哲

ロシアが誘発する供給不安

 身近な食品の値上げはいつまで続くのか。

物価高で傷む資本主義陣営=吉田哲

 穀物由来の食品、食用油関連の食品、穀物を飼料に作られた肉などの小売価格の上昇が目立つ。総務省統計局のデータ「小売物価統計調査」によれば、ウクライナ危機発生前の1月と5月を比較すると、中華麺、ゆでうどん、スパゲティ、小麦粉、食用油、外食向けの天丼、焼肉などの価格が大きく上昇した(東京都区部、税込み)。

 上昇率は小売価格よりも国際価格(世界各国において広く貿易が行われている商品の一致された価格)の方が大きい。国連食糧農業機関(FAO)が公表する世界食料価格指数は、軒並み上昇した。1月と5月で比較すると、総合指数は16.1%上昇。同指数を構成する品目別は、食用油と穀物が23.3%、食肉が8.8%上昇した。国際価格の指標とされるシカゴ先物市場では、小麦が48.7%、トウモロコシが28.7%、大豆が18.4%の上昇だった。日本では業者の努力によって一定程度、小売価格の値上げが食い止められている模様だ。

 食品価格が上がり続ける食料インフレを引き起こしたのは、ウクライナ危機である。

 ロシアとウクライナは小麦やトウモロコシの主要な生産地だ。また、ロシアは鶏肉や豚肉でも高いシェアを持っていた。「ウクライナ危機↓主要国からの供給減少懸念↓食料価格上昇」との流れが実生活に及んでいる。

 ロシアはウクライナ侵攻前から戦略的に、穀物や化学肥料、エネルギーなどの自国資源を囲い込む姿勢を鮮明にしたり、侵攻後に至ってはウクライナの穀物を輸出できないようにしたりしてきた。

 西側が制裁で、ロシア産のエネルギーを買わないようにしていることも相まって、侵攻後は世界全体で、資源の供給不安が生じている。西側で強いインフレが起きているのは、ロシアの資源戦略が効いているためだ。ロシアは西側に供給不安を発生させる動機を与えている。

西側に打撃与えるまで

 プーチン大統領は6月17日の経済フォーラムで「西側が、世界での自らの支配が永遠の価値であると信じているが、あり得ない。ロシアは強力な主権国家として、新しい時代に入る」と述べた。

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