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スリランカの次は? 1年以内に12カ国前後でデフォルトの恐れ=対木さおり
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新型コロナウイルス禍にロシアによるウクライナ侵攻も重なり、新興国に危機が広がりかねない。
債務膨張に資源高がトドメ=対木さおり
スリランカ経済が崩壊に直面し、人道危機にまで発展している。外貨準備はほぼ枯渇し、原油や食糧が輸入できない事態に直面。燃料の備蓄も底を突きかけているほか、医薬品などの不足も深刻な状態にある。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)以降、新興国が陥った最大の危機的状況であり、ロシアのウクライナ侵攻の影響も受けた資源価格高騰が今後も続けば、同様の危機が他の新興国にも広がりかねない。
1948年の独立以降で最悪の経済危機に陥っているスリランカでは、ゴタバヤ・ラジャパクサ前大統領の辞任を求めて4月から平和的なデモが続いていたが、主要都市コロンボでは5月上旬、政府支持者のグループがデモ隊を襲撃する事態が発生。この衝突で死者や多数の負傷者も出る事態に発展し、マヒンダ・ラジャパクサ首相が辞任を表明した。
その後に就任したウィクラマシンハ首相は6月22日、同国議会で「経済が崩壊している」と述べたことが、スリランカの今を象徴する。スリランカ中銀によれば、今年5月のインフレ率は前年同月比45.3%上昇し、中でも食品は58.0%上昇、ガソリンやディーゼル燃料などを含む交通費は76.7%も上昇した。現地報道によれば、食料品店やガソリンスタンドには常に長い行列ができ、ガソリンスタンド前には武装した兵士も配置されているようだ。
ウィジェセケラ電力・エネルギー相は6月16日、「燃料の備蓄はあと5日分しかない」と述べ、スリランカ政府は外貨調達とつなぎ融資獲得に奔走を続けている。また、国連世界食糧計画(WFP)は6月22日発表のリポートで、人口約2200万人のスリランカで490万人が食糧危機に直面していると警告した。基礎的な医薬品の200種類近くで在庫が払底するほか、電力不足などによって医療提供体制もマヒしているという。
急増した対中債務
対国内総生産(GDP)比で60%(2020年末)の対外債務を抱えるスリランカは今年4月、ドル建て債の利払い(7800万ドル)が実行できず、建国以来、初のデフォルト(債務不履行)に陥った。世界銀行が同月、医薬品調達などに充てるためスリランカに6億ドルの金融支援を決めたほか、日本も5月、スリランカに300万ドル(約4億円)の無償資金協力を発表するなど各国の支援も相次ぐが、焼け石に水の状態にある。
スリランカがここまでの苦境に陥ってしまったのは、複合的な要因がある。スリランカ経済は長年、構造的な脆弱(ぜいじゃく)性を抱えていた。具体的には、(1)財政赤字と経常赤字という「双子の赤字」の放置、(2)対外債務の膨張、(3)保護主義的な政策運営と場当たり的な対応──が挙げられる。
第一に、「双子の赤字」問題は、スリランカ政府にとって長年解決のめどが立たない頭の痛い問題となってきた。スリランカの財政収支は、支出が収入を上回る状態が恒常化。経常収支も、スリランカの貿易は衣服品、茶類など農産物を輸出し、エネルギーや機械類を輸入する構造…
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週刊エコノミスト
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