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ヒト、モノへの成長投資で国内の強み拡大へ=永浜利広

国内回帰

 長期停滞から抜け出すには、経済の成長期待の高まりが必要だ。それによって設備や人への投資が拡大すれば、需要拡大を通じた生産性向上により賃金も上がり、経済成長の好循環につながる。

今こそ脱炭素、AI、IoT、バイオへの投資を=永浜利広

 新型コロナウイルス感染拡大に伴う影響やロシアのウクライナ侵攻などにより日本経済を取り巻く環境は厳しさを増しているが、それ以前から日本経済は危機的な状況にある。

 バブル崩壊以降の日本経済は、マクロ安定化政策を誤ったことで、デフレが長期間放置されてしまった。そして、設備や人への成長投資が十分になされなかったこともあり、経済成長が長期停滞を続ける「失われた30年」という状況が続いている。

 実際、主要国の実質総固定資本形成の推移を見ても、1991年比で米国が2.7倍、英国が1.6倍、ドイツが1.4倍に伸ばしているのに対し、日本は逆に0.9倍以下に減少している(図1)。また、企業内教育に重点が置かれてきた日本では、企業外での教育が手薄であることはよく知られており、実際に先進国で比較すると、積極的労働市場政策に対する公的支出の対GDP(国内総生産)比が少なく、特に職業訓練が少ないことがわかっている。

資源自立経済

 成長会計に基づけば、こうした有形・無形の固定資産や人的資本の蓄積が停滞することで、資本・労働投入量や全要素生産性の低迷を通じて潜在成長率の低迷につながることになる。このため、逆に設備や人への投資を促して経済の長期停滞から抜け出すためには、経済全体や企業それぞれの成長期待が高まることが必要であり、それによって設備や人への投資が拡大すれば、需要拡大を通じた生産性向上により賃金も上がり、経済成長の好循環につなげることができる。

 他方、コロナ禍やウクライナ情勢に端を発した物資や資源の供給制約が拡大している。コロナ禍を受けたサプライチェーン(供給網)寸断の一部の例をピックアップしても、世界的な旅客機の減便による航空輸送の減少や、世界最大の経済大国である米国でも入国者の隔離措置により技術者の移動に障害が生じたりしている。

 欧州連合(EU)でも国境通過に要する時間の増大や移民の停滞に伴う労働力不足などにより、医療関連物資の供給に障害が生じた。中国でも出稼ぎ労働者が地方から戻らないことによる労働力不足や、都市封鎖による陸上輸送の遅延やコンテナ船の減便が生じている。そして、日本でも中国や東南アジアからの自動車や電子部品の供給制約が発生している。

 ウクライナ危機以降も、新興・途上国を中心に世界的に人口が増加し、1次産品の需要が拡大する中、生産やサプライチェーンの混乱などにより、1次産品も含めて需給の逼迫(ひっぱく)がさらに進行している。

 このため、国際的な供給途絶リスクをできるだけ抑制し、持続的に経済成長をしていくためには、経済の国内自給率向上を通じて経済の強靭(きょうじん)化を高める経済安全保障の考え方がこれまで以上に重要になっている。これまでの資源循環経済に経済安全保障の考え方も加えた成長志向型の資源自立経済を確立できれば、必要な技術や制度・システムを海外展開につなげることも可能となろう。

 こうした中、日本の製造業においても、生産拠点を国内に回帰させる動きが活発化している。経済産業省の「ものづくり白書」に掲載された16年の調査によれば…

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