週刊エコノミスト Online ここで勝つ!半導体・EV・エネルギー
バッテリー争奪戦 欧米で始まった工場新設ラッシュ=土方細秩子
有料記事
米国ではバッテリー工場の新設ラッシュが始まった。海外電池メーカーに日本勢は対抗できるか。
世界市場は毎年30%の高成長 欧米EVへの供給握る中韓勢=土方細秩子
電気自動車(EV)にとって欠かせないバッテリーの確保に向け、自動車メーカーや成長産業として期待を寄せる各国政府の動きが活発化している。
顕著なのが「バッテリー工場」への投資加速だ。米国では今、フォード・モーター、ゼネラル・モーターズ(GM)、テスラの国内メーカー、さらに欧州ステランティスが進出し、それぞれ新たな工場への多額の投資を発表した。フォードは昨年、韓国SKイノベーションと提携し、「ブルー・オーバルSK」という合弁会社に114億ドル(約1兆5000億円)投資をすることを明らかにした。ケンタッキー州に2025、26年に開業する二つの工場を建設する。
GMは韓国LGエナジー・ソリューションと提携し、ミシガン州内に3カ所目となる工場建設に26億ドルを投資する。GMとLGエナジーは「アルティアム・プラットフォーム」というバッテリーやモーターなどを組み込んだ車体基盤を共同開発。30年には年間100万台のEV販売を目指す。ステランティスもインディアナ州に25億ドルを投じ、韓国サムスンSDIとの提携による工場を建設する他、カナダではLGエナジーと組んだ別の工場も建設、投資総額は41億ドルに上る。
自動車メーカーが特定のバッテリーメーカーと提携し、資本投下を行って自社向けのバッテリーを囲い込む、という傾向が目立つが、これは自由市場からバッテリーを購入するというビジネスモデルでは「もはやバッテリー争奪戦に生き残れない」との危機感を持つメーカーが増えている証左だろう。
米国でのEV販売は好調だ。調査会社EVアダプションによると米国の今年のEVの販売台数は昨年比5・37%増の84万5000台となり、30年には自動車販売全体のおよそ3割、470万台以上へと成長することが予測されている。また、EVの販売の広がりは、米国だけのものではないグローバルな動きで、30年には世界のEV販売台数が2000万台に到達する、という予測もされている。
電池メーカー首位は中国
米国のバッテリーの確保状況を見ると、フォードは現状で今回トップとなるおよそ100ギガワット時を確保、GMは70ギガワット時となっている。一方、グローバルでは、EV生産世界一を目指す独フォルクスワーゲン(VW)が、欧州全体で240ギガワット時 のバッテリー確保のため、それぞれ40ギガワット時の工場を6カ所建設する予定だ。
パートナーとなるのはスウェーデンのノースボルトで、すでに1カ所目が稼働しており、25年にドイツ国内で2カ所目の建設が始まる。
フォードによると「30年には自社だけで国内のバッテリー需要は140ギガワット時に達し、グローバルでは240ギガワット時となる」と…
残り1387文字(全文2587文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める