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人手不足で賃金が上がってもインフレ率に追いつかない米国の現実=鈴木敏之
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米消費者物価指数
質の悪いインフレが加速 すでに景気後退も始まる=鈴木敏之
米国でインフレと景気後退が同時に起きるスタグフレーションが現実になろうとしている。ここで目立つのは、インフレの質が悪い一方で、景気後退の質は良さそうということである。
7月13日に、6月の消費者物価指数(CPI)が発表された。総合指数で前年比9.1%という高さが一般の耳目を集めたが、より注意を向けなければならないのは、そのインフレの質の悪さである。
食料とエネルギーを除いたコア指数が前月比で0.7%も上昇していた。さらに、サービス分類の上昇が見えているが、それは賃金上昇を反映している。人手不足が賃金を押し上げ、それがCPIのサービス分類の上昇を加速させている。また、供給制約が緩んで下がるはずだった中古車の値段が、再上昇している。帰属家賃の上昇が強いが、指数におけるウエートが大きいので、CPIの上昇率を底上げしてしまう。また、上がっているにしても賃金上昇がインフレ率に追いつかないので、人々の生活水準が下がる問題も悩ましくなってきている。
理にかなう利上げ
インフレが質の悪い一方で、今のところ、景気後退は質が良い。景気後退がいつ起きるかが問題だが、景気を経済活動の水準ではなく、変化の方向でみる基準に従えば、もう始まっている。2022年1~3月期の国内総生産(GDP)は1.6%減のマイナス成長であったし、4~6月期も2期連続でマイナス成長になると試算されている。それは、テクニカル・リセッション(2四半期連続での前期比マイナス成長)だとしても、長短金利が逆転していることで、やがて景気後退は避けられないという見方は根強い。
しかし、求人件数が求職者1人に何件あるかの基準でみると、大変な人手不足であり、失業率も史上最…
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週刊エコノミスト
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