次世代型原発ともてはやされるSMR開発に決定的に欠けているもの=村上朋子
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次世代型原発として注目が集まる小型モジュール式原子炉(SMR)。だが1970年代前後から開発されてきたものにもかかわらず、実用化に至っていないのが現実だ。
挑戦し続ける覚悟と信念が開発者にはあるのか
ここ数年、特に国際原子力関連のニュースで、新しい型式となる「小型モジュール式原子炉(SMR)」の文字を見ない日はないくらい、猫もしゃくしもSMR、SMRともてはやすブームとなっている。
技術中立的な立場のはずの国際エネルギー機関(IEA)でさえ、6月30日付のリポート「Nuclear Power and Secure Energy Transitions: From Today's Challenges to Tomorrow's Clean Energy Systems(原子力と安全なエネルギー転換:今日の課題から明日のクリーンエネルギーシステム)」で、「温暖化ガス排出ゼロに向けた取り組みの中で、SMRへの追い風加速」と盛大に持ち上げている。
実はSMRが昨日今日考案されたものではなく、1970年代かそれ以前から日本を含む多くの国で開発されてきながら、今日に至るまで数基の例外を除きほぼ1基も実用化されたことがないとの事実には全く触れられていない。
SMRは、「スモール・モジュール原子炉(Small Modular Nuclear Reactors)」の略称で、その名の通り小型。従来型原発の「軽水炉」と呼ばれるタイプの原発だと、出力は90万~120万キロワットが主流だ。一方、考案されているSMRの多くは、30万キロワット程度だ。
SMRの開発者らは、「多くの部品を工場で一気に大量生産し、各地の建設地に持っていくという量産化がしやすい」「別の設備も併設しやすく、例えば原子炉で作った熱を利用して発電と同時に水素も作れる」などとしている。
欠ける“顧客”目線
ここで国の原子力政策などを審議する原子力委員会が2000年まで、5~6年置きに策定していた政策文書「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画(長計)」に着目したい。ちなみに長計に“SMR”の言葉が初登場したのは、82年(第6回)だ。
開発について、「技術的に最も安定している軽水炉の多目的熱利用については、中小型軽水炉(SMRを指す)の利用を含め、条件によっては比較的早期に実現する可能性があり(中略)民間主導の下で進められるべきもの」とある。
この「民間主導で進められるべき」との部分からは、国は「既に研究開発段階は過ぎた。今後は市場原理で普及していく」と考えていたらしいことも推察される。
日本では70~80年代、全国で約50基の原発(軽水炉)が建てられた。文書策定当時、既に大型軽水炉は実用化され、技術は成熟期にあるのだから、民間の創意工夫により、小型化はもちろん、それを水素製造など発電以外の熱利用にも適用することく…
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週刊エコノミスト
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