安い積立金にだまされるな タワマンが「不良資産」に?! 榊淳司
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建築資材や人件費が高騰するなか、多くのタワマンが今年、大規模修繕工事に直面する。管理組合にとって資金不足が悩みの種だ。
時がたつほど「金食い虫」の恐れ
マンションの管理費や修繕積立金が大幅に値上がりしている。しかしそれをそのまま新築販売時に反映させると売れ行きが鈍る。そこでマンションの売り主(デベロッパー)は、実にずる賢い手段を用いる。新築販売時には月々のランニングコスト(管理費と修繕積立金)を安く見せて、一般消費者が買いやすく装うのだ。
例えば70平方メートル程度のタワーマンションなら、当初は「修繕積立金月額1万2000円」というような設定にする。しかし、それでは全然足りない。彼らが用意した「長期修繕計画」を読むと、ちゃっかり値上げの予定が書き込まれている。最終的に4万円前後にまで値上げされることになっていることもある。本来、最初から将来の値上げが必要ない水準に設定しておけばよいのに、そうはしていない。
国土交通省が示す修繕積立金のガイドラインは、今や1平方メートル当たりの単価にして338円(2021年9月改定、20階以上の平均値)となった。この10年で1.5倍程度に値上がった。
管理費も値上がりが激しい。東日本不動産流通機構の「首都圏中古マンションの管理費・修繕積立金(20年度)」によると、首都圏の管理費の1平方メートル当たりの単価は191円。タワマン以外の、横に広がる通常のタイプの「板状型マンション」も含めた数値だ。
タワマンの管理費は板状型の1.5倍、修繕積立金は2〜3倍まで上がる可能性が高い。すると、平均的なタワマンの修繕積立金+管理費の単価は同1000円近くとなろう。70平方メートルの住戸なら7万円弱。都市計画税や固定資産税が加われば、月額の維持コストは10万円前後になるだろう。販売時と比べあまりにも高すぎないか。
負担を最初から強いれば、新築タワマンは今のように売れないだろう。現状の「最初は安く見せてあとで値上げ」という手法は、あまりに無責任だ。
さらにいえば、折からの人件費高騰で「管理組合─管理会社」の関係は完全な管理会社の「売り手市場」に変貌している。
特に、何十年も前に結んだ業務委託料がベースの場合、管理会社にとっては「赤字物件」になっているケースも多い。当然、管理会社側は値上げを要求する。値上げ要請を受け入れない管理組合に対して、管理会社側が三くだり半を突きつけるケースが多発している。管理費や修繕積立金の高騰レベルは、そこまで達しているのだ。
大幅な値上げが必要に
タワマンも例外ではない。むしろ、タワマンであることで管理費や修繕積立金の値上が…
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週刊エコノミスト
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