週刊エコノミスト Online 少子化の高校野球
甲子園≠高校野球 100年の歴史には理由がある 手束仁
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社会状況を反映しているかのように、高校野球も強い私立校に入部希望が集中する一方で、公立高校は部員不足が加速するという「二極化」の傾向は、年々顕著になっていると感じている。最近の子どもは、小学生など比較的早い段階で、「スポーツの選択」を余儀なくされていると思う。これは子どもの頃に、遊びながらスポーツの選択をする機会がなくなっているためだ。ほとんどの公園でボール遊びが禁止され、公園で遊ぶこと自体、近所から騒音のクレームが来るような社会状況では、子どもが遊びの中でスポーツを選択するということが、ものすごく難しくなっている。
だから、野球で遊びたいと思っても、学習塾みたいに、学童(小学生)野球チームに入らないと野球ができない。少子化で子どもの人口が減少すると同時に、子どもができるスポーツの種類も増える中で、幸いにも野球は、まだ学童野球チームもかなり残っているので、子どものスポーツの選択肢のひとつとして存続している。
こうした状況だから、子どもの頃に一度そのスポーツを始めると、途中でやるスポーツを変えることが難しくなっている。そのスポーツを高校まで続けるか、スポーツ自体をやめるかだ。この傾向はどのスポーツでも強くなっているが、野球では特に顕著になっている。それらの結果が、近年の高校野球部員数の減少となって、表れているのではないか。
子どもの野球人口減少と高校野球部員数の減少は、今後も続くだろう。中学校の部活動としての軟式野球部・野球部員はかなり減少しているが、ボーイズリーグやシニアリーグといった、中学の硬式野球クラブチーム数とその部員はそれほど減っていない。これが二極化の直接の端緒になっていると思う。
3000校の裾野
一般的には、テレビで中継されている春夏の甲子園大会を見て、これが高校野球だと思ってしまうが、そうではない。甲子園に出場する49校ではなく、参加校3857校(2022年)全部で高校野球ということだ。だから、全体の約2割の野球部強化を方針としている700校程度の私立強豪校を除いた、残りの公立高校を中心とする3100校が、大きな裾野として高校野球を支えている。私立強豪校…
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