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“クルマだけ”じゃダメ!テスラ製スマホが生む「新しい価値」 土方細秩子/編集部
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数年前からテスラが「モデルπ(パイ)」と呼ばれるスマホの製造に乗り出すといううわさが流れている。社長のイーロン・マスク氏が新車発表イベントで映像として紹介したこともあり、2022年後半あるいは23年にも発売になるのでは、と言われているが、テスラは現時点では一切公表していない。
スマホ産業への参入は、テスラにとっては非常に理にかなったビジネス拡張だ。多くの自動車メーカーが、車載OSであるグーグルの「アンドロイドオート」やアップルの「カープレイ」などと連動させて車内エンターテインメントシステムを構築する中、テスラは独自の自動運転システム「オートパイロット」と連動させた車載ナビなどを提供している。
テスラがスマホを作ることで、テスラ車のユーザーは、アンドロイドオートやカープレイを使わずにストレスのない操作感を得られ、かつ、テスラはユーザーデータの一元化を実現できる。これが非常に大きなビジネス機会になり得る。
なぜなら、テスラ車のユーザーの車内空間における行動を把握できれば、消費行動を分析把握でき、そこから得られたビッグデータを活用したさまざまなビジネスが期待できる。さらに、車載端末から通信、クラウド支援まで今後、自動車向け事業の急拡大が見込める。
テスラの場合、すでに世界で300万台のEVを販売し、そこから集めたデータと独自のスーパーコンピューター「Dojo」を連動させ、高度な運転支援や自動運転へのフィードバックといったシステムを構築しつつある。
マスク氏の果てしない構想
ガソリン車と違って電気自動車(EV)は、電気で動く車載センサー類と相性がいい。クルマや人の行動履歴や運転状況だけでなく、道路上の信号からバス停の待ち人まで、あらゆる情報、さらにはあらゆる場所で、どのように走行したかといった大量のデータを集めやすい。マスク氏はその重要性に気づいているのだ。
さらに関連会社である宇宙ビジネス企業「スペースX」が運営する低軌道衛星網「スターリンク」により、地球上のどんな場所にいてもスムーズな通信環境が提供できる。
テスラのスマホOSと走行系OSの親和性を高めることで、スマホからク…
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週刊エコノミスト
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