週刊エコノミスト Online

米インフレが7%近辺に定着の恐れ、いら立つFOMC 小野亮

パウエルFRB議長、高インフレ長期化を警戒(2022年9月、ワシントン)Bloomberg
パウエルFRB議長、高インフレ長期化を警戒(2022年9月、ワシントン)Bloomberg

 またしても、市場の期待は悪い方に裏切られた。10月13日に発表された9月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比8.2%上昇、食品・エネルギーを除くコアは同6.6%となり、いずれも市場予想を上回った。インフレ(物価上昇)悪化のサプライズは今年に入って7回目(コアは6回目)。インフレ圧力に対する見通しの難しさは深刻である。

 コアと同様、基調的な物価動向を示す「加重中央値CPI」(ウエートを加味して上昇率分布の中央に来る品目が対象)、「刈り込み平均CPI」(上昇率と下落率の上下8%の品目を除いて算出)もそれぞれ前年比7.0%、7.3%となり、8月と比べて一段と上昇した。前月比年率という「瞬間風速」の推移を含め、これらの基調的指標は、米国のインフレが7%近辺で定着する恐れがあることを示している。

 インフレの中身の変化にも、高インフレの定着リスクが表れている。今年に入り、サービス物価の寄与度が増大、コアに限れば今や7割以上がサービス物価の上昇によるものだ。二つの理由がある。一つは、金利急騰によって米国の住宅需要が持ち家から借家に変化し、ウエートの大きい家賃物価の伸びが加速している。もう一つは、労働需給の歴史的逼迫(ひっぱく)を背景に、賃金の高い伸びが続いていることだ。

 予想以上に長く高止まりするインフレに、米連邦公開市場委員会(FOMC)はいら立ち焦っている。9月会合で示された経済見通しからは、次のようなシナリオが読み取れる。

「物価安定の回復時期は2024年末。これ以上は待てない。予想以上のインフレ圧力により、目標達成には一段の厳しい利上げが必要で、23年の利下げは時期尚早。インフレ退治の成功には、景気減速と失業率の上昇という犠牲はやむを得ない」

 筆者が24年末を「物価安定の暗黙の…

残り564文字(全文1314文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事