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米インフレが7%近辺に定着の恐れ、いら立つFOMC 小野亮
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またしても、市場の期待は悪い方に裏切られた。10月13日に発表された9月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比8.2%上昇、食品・エネルギーを除くコアは同6.6%となり、いずれも市場予想を上回った。インフレ(物価上昇)悪化のサプライズは今年に入って7回目(コアは6回目)。インフレ圧力に対する見通しの難しさは深刻である。
コアと同様、基調的な物価動向を示す「加重中央値CPI」(ウエートを加味して上昇率分布の中央に来る品目が対象)、「刈り込み平均CPI」(上昇率と下落率の上下8%の品目を除いて算出)もそれぞれ前年比7.0%、7.3%となり、8月と比べて一段と上昇した。前月比年率という「瞬間風速」の推移を含め、これらの基調的指標は、米国のインフレが7%近辺で定着する恐れがあることを示している。
インフレの中身の変化にも、高インフレの定着リスクが表れている。今年に入り、サービス物価の寄与度が増大、コアに限れば今や7割以上がサービス物価の上昇によるものだ。二つの理由がある。一つは、金利急騰によって米国の住宅需要が持ち家から借家に変化し、ウエートの大きい家賃物価の伸びが加速している。もう一つは、労働需給の歴史的逼迫(ひっぱく)を背景に、賃金の高い伸びが続いていることだ。
予想以上に長く高止まりするインフレに、米連邦公開市場委員会(FOMC)はいら立ち焦っている。9月会合で示された経済見通しからは、次のようなシナリオが読み取れる。
「物価安定の回復時期は2024年末。これ以上は待てない。予想以上のインフレ圧力により、目標達成には一段の厳しい利上げが必要で、23年の利下げは時期尚早。インフレ退治の成功には、景気減速と失業率の上昇という犠牲はやむを得ない」
筆者が24年末を「物価安定の暗黙の…
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