大型新薬に期待、世界のバイオ医薬4銘柄 今井正之
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がんやアルツハイマーなど有望分野で新薬が期待される銘柄をピックアップした。
ビオンテック ファイザーとコロナワクチン
米国にはADR(米預託証券)として上場しているドイツ企業。日本で「ファイザーのワクチン」として知られる新型コロナワクチン「コミナティ筋注」を開発した。ファイザーは開発・臨床試験の支援と供給を担当した。
mRNA(メッセンジャーリボ核酸)を用いた新型コロナワクチン開発は、従来の手法が通常3年以上かかるのに対し、1年未満で実用化に成功。「ゲームチェンジャー」となった。ウグル・シャヒンCEO自らワクチン設計を行い感染が欧州に広がる前の20年1月に設計を完了していた。
シャヒンCEOと技術責任者のオズレム・トゥレシ博士の夫妻は共にトルコ移民2世で、苦学しながら科学者の道を歩んだ実直な人柄。また同社の研究開発チームの国籍は世界60カ国に及び、その半数が女性という。ノーベル賞候補とささやかれるカタリン・カリコ博士が13年から上級副社長を務めており、mRNA技術のドリームチームといってよい陣容だ。
mRNAを用いた医薬開発技術はがん抑制などワクチン以外のさまざまな分野に応用が可能とされ、mRNAの中核技術とファイザーをパートナーに持つビオンテックは今後も本命視できる。
バイオジェン エーザイと認知症治療薬
神経疾患、免疫疾患・血友病を主な対象とし、テクフィデラ、タイサブリ(いずれも多発性硬化症治療薬)、スピンラザ(脊髄(せきずい)性筋萎縮症薬)などの製品を持つ。85年にモノクローナル抗体の開発・製品化を目的として設立されたアイデック(IDEC)社と合併し、リツキサン(非ホジキンリンパ腫治療薬)を入手している。
近年の注目点は、日本のエーザイと提携し、開発・治験・販売を進めている世界初のアルツハイマー治療薬で、アルツハイマー型認知症の要因の一つとされる脳内のアミロイドβ(ベータ)の蓄積物を、ヒトモノクローナル抗体を用いて結合し除去する薬効が特色。昨年、FDA(米食品医薬品局)が「アデュカヌマブ」を限定承認と報じられ株価が急騰したが、医療保険PBM(薬剤給付管理)事業者の適用対象とはならず、その後株価は反落していた。しかしながら22年9月に新薬「レカネマブ」の治験が好結果との報道から再び活性化した。実は両社とも当初よりレカネマブの薬効を本命視している節があり、アデュカヌ…
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週刊エコノミスト
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