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テクノロジー

アルツハイマー新薬、臨床で好成績も課題山積 村上和巳

無症状でもアミロイドβの蓄積を検出できる装置はあるが、検査費用は高額だ Bloomberg
無症状でもアミロイドβの蓄積を検出できる装置はあるが、検査費用は高額だ Bloomberg

 エーザイが米バイオジェンと開発した「レカネマブ」が有望薬として登場しそうだ。だが、適用は軽症者や発症前患者に限られるなど、壁も立ちはだかる。

患者発見法と価格が壁に

 高齢化が進む日本の認知症患者は、2025年には65歳以上の高齢者の約5人に1人、総数約700万人に達すると予想され、半数以上は脳の神経細胞が徐々に変性して発症するアルツハイマー病(AD)と見込まれている。しかし治療薬の開発が難しく、市場規模は大きくとも日本では10年以上、新薬が登場していない。

 だがここに来て急展開した。国内製薬大手エーザイが、米バイオジェンと治療薬「レカネマブ」を共同開発し、最終段階の臨床試験で良好な成績を示せたと9月末に発表。23年中にも日米欧で承認される可能性が浮上してきた。

 レカネマブは、人工的に製造した抗体を用いる「抗体医薬」の一種。AD発症の原因として有力視されている、神経細胞にたまるたんぱく質「アミロイドβ(ベータ)(Aβ)」を取り除き、発症を遅らせる働きがある。Aβは自然と神経細胞内に作られてしまう。最初は小さく微量だが、徐々に複数が凝集して硬い「プラーク」を形成し、沈着。一定以上増えると神経細胞は死滅してしまい、それが徐々に進行して認知機能を喪失させる一因と考えられている。

 エーザイが発表した臨床試験の結果では、軽症のAD患者と、発症の前段階「軽度認知障害(MCI)」の患者に対し、レカネマブを1年半投与。偽薬を投与された患者に比べ、ADの重症度を判定する「臨床的認知症重症度判定尺度(CDR−SB)」のスコア悪化が、27%抑制されていた。つまり、進行を一定程度遅らせられたということだ。日本認知症学会理事長の岩坪威・東京大学教授は「明確な効果が認められたインパクトある大きな出来事」と話す。

 過去20年ほどの治療薬開発は、主に①Aβを作ってしまう酵素の働きを邪魔する化合物を作る、②凝集し始めたAβを除去する抗体医薬を作る──という戦略がとられてきた。だが米ファイザーをはじめ、複数の世界的な大手製薬会社が開発中止に追い込まれてきた。

 レカネマブ以前に有望視されていたのは、エーザイとバイオジェンが共同開発した、レカネマブと同様の戦略で開発した抗体医薬「アデュカヌマブ」だった。だが19年3月、有効性が見込める可能性が低いとして進行中の二つの臨床試験を中止していた。

 ただ後のデータ解析で、一つの臨床試験では、Aβ減少とともに症状進行抑制が認められたとして日米欧で承認を申請。日欧は有効性の確認は困難として承認を保留したが、米国は社会的要請を鑑みて追加試験を課す「条件付き承認」とした。しかし保険が適用される対象者は臨床試験参加者らに限定され、ほぼ使われていない。

 二つの抗体医薬の開発結果が明暗を分けたことについて、岩坪氏は「アデュカヌマブは臨床試験開始当初、副作用の懸念から投与量を徐々に増やす方法だった上、試験中断もあり総投与量が不十分だった患者も少なくない。経験を踏まえ、レカネマブの臨床試験では、投与開始時から最高投与量だったからでは」との推測を示す。

 一方、Aβの抗体医薬をめぐっては、過去の臨床試験などで、副作用として「アミロイド関連画像異常(ARIA(アリア))」と呼ばれる、脳の浮腫や微小出血などが指摘されている。アデュカヌマブでは40%強に認められたが、レカネマブでは10%台にとどまっている点も好材料だ。

「アデュカヌマブは“硬く固着しきった”プラークをごっそり除去するのに対し、レカネマブは、固まりきる前段階のAβの塊を主な標的とした。このため、除去時の神経細胞…

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