経済・企業

今からチェック!国内未上場バイオベンチャー5社 荒木涼子

 独自技術でゲームチェンジャーを狙う未上場の国内バイオベンチャーを紹介する。

メガカリオン 人工血液で輸血医療革新

 体のさまざまな細胞に変化するiPS細胞を使い、人工血液で少子高齢化が進む日本の輸血医療を救おうという京都大学発ベンチャー。ヒトiPS細胞由来の巨核球(血小板を生産する造血系細胞)を不死化・凍結保存し、品質の良い血小板を大量生産できる技術が強み。1回の輸血には2000億個ほどの血小板が必要で、この技術が欠かせない。従来の献血・輸血システムを変える可能性を秘める。

 血液成分の血小板は止血作用を持つ。事故や手術での輸血に使われるが、原料は献血が頼りのため、供給量に限りがあるほか、4日間程度しか保存できない。一方、iPS細胞から作製すれば、大量生産かつ使用期間を延ばすことができ(最新技術で7〜10日間)、安定供給が可能になる。

 2022年、「血小板減少症」の患者に輸血する治療法の治験が、京大病院にて始まった。23年までに10人で安全性や有効性を確認する予定で、早ければ24年に国へ承認申請、25年にも実用化を目指す。

 血小板は体内で止血作用を持つが故、培養液中でもちょっとした刺激ですぐにかさぶたを作るように活性化してしまい、量産が難しいという課題があった。だが機械メーカーの協力を得て、一度に1000億個以上の血小板を作れるようになった。

 血小板輸血は医療の基本インフラで年間80万〜90万回分が国内の臨床現場で使われる。日本の市場規模は約730億円、欧米で3000億円超とされる。国内では献血でまかなうが献血者の75%が50歳未満の一方、輸血を受ける患者の86%は50歳以上で、今後需給ギャップが生じるのは必至だ。同社は最終的には「全自動」の血液工場で医療インフラ革新を目指す。

C4U 国産のゲノム編集技術

 狙った遺伝子を効率よく改変する技術「ゲノム編集」において、真下知士教授(現東京大学)らが大阪大学在籍時に発明した「国産」技術での実用化を図る同大発ベンチャー。医療から水産まで幅広い分野で応用を目指す。

 広く知られるゲノム編集の手法は、欧米の研究者らが開発した「クリスパー・キャス9」があり、2020年ノーベル化学賞を受賞。この技術はそれまでの遺伝子改変技術より格段にスピードや精度が上がり、遺伝子を扱う分野ではもはや欠かせない技術だ。多分野で研究開発が進むが、産業化には特…

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