経済・企業

ゼロから分かるバイオ医薬品Q&A (編集部)

 治療が難しかった病気に効果を発揮するとして、注目を集めるバイオ医薬品。コストは高いが、後発薬も広がり、市場は拡大しつつある。>>特集「これから来る!バイオ医薬株」はこちら

Q バイオ医薬品とは?

A 生物の力を利用した医薬品

 バイオ医薬品は、生物の力を利用して作る医薬品だ。病気に対して効果があるたんぱく質からできており、製造には遺伝子組み換えや細胞培養の技術が用いられる。治療が難しかった病気に効果を発揮することが期待されている。

 従来の一般医薬品(低分子医薬品)は薬品の化学合成によって製造する。飲んで効く錠剤など、さまざまな種類の薬品がある。分子の大きさは非常に小さい。

 これに対し、バイオ医薬品は非常に複雑な構造のたんぱく質からできており、分子は従来の薬と比べ、非常に大きい。口から飲むと、たんぱく質は酵素で分解されてしまうため、飲み薬を作るのは難しく、ほとんどが注射剤だ。免疫力の低下や、体の機能の異常など、病気の原因にピンポイントで働きかけて治療するため、効果は高く、副作用も比較的少ない(図1、図2)。

Q その歴史は?

A 「ヒトゲノム」解析で躍進

 バイオ医薬品の歴史は、遺伝子情報の解析の歴史に重なる。ヒトの遺伝子情報が集約されているDNAの二重らせん構造が1953年に発見され、DNAを構成する物質が遺伝情報を担っていることが分かった。

 バイオ医薬品の開発が加速したのは、ヒトの設計図ともいえる「ヒトゲノム(遺伝子情報)」を解析するヒトゲノム計画がきっかけだ。90年にスタートした同計画は、コンピューターなどの情報技術の発展とともに進み、2003年に約30億に上るヒトのDNAの配列が明らかになった。これにより、どの遺伝子がどの病気と関係するかという研究が進み、バイオ医薬品の開発につながった。

Q どうやって作るの?

A 薬を生む細胞を作成、培養

 バイオ医療品の開発は、薬を生産する基となる細胞を作り出すことから始まる。遺伝子組み換え技術により、薬となるヒトのたんぱく質を作る遺伝子をDNA分子に組み込み、これをさらに大腸菌や酵母、動物細胞などに導入。薬を生み出す“原本”となる細胞が完成する。

 この細胞を培養し、増やすのが次の工程だ。細胞が増えるにつれ、目的となるたんぱく質も増えていく。その後、培養液の中から不要な物質を取り除き、薬となるたんぱく質のみを抽出して濃縮、製剤化してバイオ医薬品になる(図3)。

Q どんな病気に効くの?

A 貧血、低身長症、リウマチなど

 体の中で必要となるたんぱく質が足りないことで起きる病気に対して、不足するたんぱく質をバイオ医薬品で補うことができる。赤血球を増やす作用があり、腎性貧血治療に用いられるエリスルポエチン、がんやC型肝炎に使用されるインターフェロン、低身長症に効く成長ホルモンなどがある。

 近年開発が急速に進むのは、異物を体から取り除く「抗体」を利用した抗体医薬品だ。がんや関節リウマチを治療する薬が代表的だ。抗体の中でも、1種類の細胞から均一かつ大量に作られた「モノクローナル抗体」を使った抗体医薬品が最近、有効性の高さから注目されている。

Q どうやって糖尿病を治すの?

A インスリンで血糖値を制御

 糖尿病の患者は血糖値を下げるホルモンであるインスリンが膵臓(すいぞう)で十分に作れず、血液中のブドウ糖がコントロールできなくなる。バイオ技術で作ったインスリンを補充することで、血糖値を制御できる。

 糖尿病のバイオ治療薬は、70年代から、大腸菌に遺伝子を人工的に組み込み、インスリンを作り出す研究が進んだ。80年代には、世界最初のバイオ医薬品…

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週刊エコノミスト

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