国際・政治

日銀総裁の有力後任候補は雨宮・中曽両氏 “緩和”の即時解除は困難 窪園博俊

金融政策はもはや身動きが取れなくなっている
金融政策はもはや身動きが取れなくなっている

 複雑怪奇化した金融政策の修正は困難を極める見通しだ。

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 2023年4月に黒田東彦日銀総裁の任期満了を控え、金融市場では後任人事への関心が一段と高まっている。世界的にインフレが加速する中、黒田日銀が堅持する大規模緩和は、副作用として「悪い円安」を招き、国民からの批判が台頭。「後任総裁は緩和修正が最大の任務になる」(大手邦銀アナリスト)と予想されるためだ。後任の人選が本格化するにつれ、金融市場は政策修正を見越した動きを強める公算が大きい。

 現状、日銀内外で後任として有力視されるのは、現副総裁の雨宮正佳氏と前副総裁の中曽宏大和総研理事長だ。むしろ、人事観測はこの2人に集中し、その他にめぼしい候補者が聞かれないのが実情だ。2人に関心が集まるのは、現行政策が複雑化し、「解除作業は困難を極める」(日銀OB)と見込まれるからだ。「政策実務に精通した者でなければ解除の指揮は難しい」(同)といわれる。

「ごまかし」のツケ

 ここで現行政策の軌跡を回顧したい。正式名称は「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」という。国民には意味不明の難解さだ。こうなったのは、13年に発足した黒田体制による国債爆買いの大量供給が奏功せず、その失敗を糊塗(こと)するために「ごまかしを重ねた」(別の日銀OB)からだ。

 黒田体制は、金融政策だけでデフレ脱却を目指す「リフレ政策」に傾倒した故・安倍晋三首相(当時)の肝煎りで発足した。国債爆買いは「黒田バズーカ」と称されたが、早々と失速。爆買い継続ができず、16年にマイナス金利に転じた。しかし、長期金利が過度に下がり、運用難で生損保の経営が危ぶまれる副作用が発生し、慌てて長期金利の過度な低下を防ぐ現在の政策に至った。

 要は「粗雑なリフォームを重ねて奇怪な形になった家屋のようなもの」(同)ともいえる。日銀は、賃上げが広がって物価上昇が持続…

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週刊エコノミスト

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