金融詐欺に気を付けろ! 働き盛りに被害急増中 鈴木雅光
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いま高齢者ではなく若者の「金融詐欺」の被害者が急増している。
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毎年4月に警察庁が発表する「生活経済事犯の検挙状況等について」という統計がある。ヤミ金融事犯、特定商取引等事犯などの検挙件数や被害額などの統計だ。このなかの「利殖勧誘事犯」に、これまでと違う傾向が見られるようになってきた。
「利殖誘発」
「利殖勧誘」の文字で想像できると思うが、要するに「もうかる投資話がありますよ」と言って近づき、うっかり話に乗ったら最後、預けたお金の大半を詐取される類いの犯罪のことだ。
このデータの何が気になるのか。「利殖勧誘事犯の相談当事者の年代別構成比」だ(表)。
過去において投資詐欺の被害者といえば、高齢者というのが常識だった。現に、この数字を見ると2016年当時は、60歳以上65歳未満が9.4%で、65歳以上が57.5%を占めていた。両方を合わせると、60歳以上の相談者が66.9%にも達している。今はどうかというと、21年時点では60歳以上の相談者は、22.1%まで減少している。
これは何を意味するのだろうか。高齢者がだまされなくなったのか、それとも高齢になった親がだまされないよう、子供たちが目を光らせるようになったからなのか。調査結果からは読み取れないが、高齢者の相談比率が大幅に減少する一方、大幅に増えたのが、実は現役世代からの相談比率だ。
16年当時、40歳代以下の相談比率は16.1%だった。それが21年現在は55.8%に急増している。
実は40歳代以下の相談比率は、徐々に増える傾向が見られていた。前述したように16年が16.1%で、17年が28.3%、18年が39.0%、19年が44.3%とジリジリ増加していたのが、20年には急に55.8%へと跳ね上がっている。
19年と20年の間に何があったのか。話題になった「老後2000万円問題」の影響ではないか。
老後2000万円問題とは、19年に金融審議会の市場ワーキンググループがまとめた報告書「高齢社会における資産形成・管理」の内容の一部をメディアが切り取り、「老後30年間で2000万円も足りなくなるから大変だ」などと大騒ぎした一件である。
一発逆転を狙って……
実際に老後不安がきっかけとなる詐欺事件は起きている。
22年の夏、国税職員を含む男女グループが、新型コロナウイルスの持続化給付金を詐取した事件があった。この事件に関与した女性は、東京地裁の初公判で罪状を認めたうえで、詐欺に加担した動機について「老後に不安があった」と述べた。
女性の年齢は22歳。この年代の人たちが、犯罪に手を貸してしま…
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週刊エコノミスト
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