商工都市で貸出金シェアが高い信金 優良融資先は銀行が獲得 宮村健一郎
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信用金庫は東海や近畿地方で貸し出しシェアが高いが、人口減少地域ではシェアを落とす。信金と銀行で取引先が分化しつつある。
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金融機関が持つ中心的機能は預金、融資、決済だ。現在、預金・決済機能は異業種の参入を許したが、地域の成長を直接刺激する融資機能は従来型金融機関の独壇場だ。信用金庫を含む地域金融機関の存在意義は、地域への融資だ。貸出金の量と貸出金利の現状をみると、それがより明確になる。
まず、信金の貸出市場を量的に振り返る。1990年代半ばから2008年のリーマン・ショックまでは貸出額は、全国的に縮小または横ばい傾向だった。その後、東海や近畿地方、沖縄県で貸し出しが大きく伸びる一方、他地域は新型コロナウイルス禍前の19年度末までは横ばい、マイナスだった。
次に他業態との比較で相対的な信金の力をチェックする。図1は各地域における全国銀行(都市銀行、地方銀行、第二地方銀行)と、信金の貸出金合計に占める、信金のシェアの変化を示す。
東海では信金のシェアの水準は高く、水準自体も増加し、他業態からシェアを奪っている。近畿でも信金がリーマン・ショックの数年前から最近までほぼ一貫して伸びた。北海道は基本的に高いが、リーマン・ショック後にシェアは低下。他は東北、北陸、中国、四国、南九州でもシェアは縮小した。これらは、人口減少などで縮小傾向にある地域の貸出市場全体の縮小率よりも大きく縮小したことを意味する。
まとめると、信金の活躍の舞台は商工業が発達した人口密度が高めの地域だと分かる。そうでない地域は、地銀や第二地銀よりシェアが低く、またはシェアが低下傾向にあり、特にリーマン・ショック後に低下が加速した。現在の信金の基本的戦略である狭域高密度戦略や、中小企業専門性が都市部のニーズにマッチして支持される一方、郡部の信金では、市場のニーズからずれてきている可能性がある。
貸出市場は金利分離
次に貸出市場を金利面から分析するため、信金、都銀、地銀、第二地銀の貸出金利の推移をみてみよう(図2)。
貸出金利については地域別ではなく全国での比較になるが、この図から…
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週刊エコノミスト
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