経済・企業

インフレで実質賃金が8年半ぶりの大幅減 宮前耕也

 厚生労働省が1月6日に発表した2022年11月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、実質賃金は前年同月比3.8%減と大幅に減少した。8%への消費増税直後の14年5月に記録した4.1%減以来、8年半ぶりの減少率だ。物価高騰に賃金上昇が追いついていないことを示している。

 実質賃金とは労働者が受け取った給与である名目賃金から物価変動の影響を差し引いたもので、生活が楽になったのか、苦しくなったのかの目安になる。名目賃金は前年同月比0.5%増だったが、消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)が前年同月比4.5%上昇と大幅に上がったため、実質賃金の減少につながった。

 企業の賃上げは、物価が高騰している状況と比べれば物足りないものの、10年代半ば以降、名目賃金はどちらかといえば上昇する局面が多くなっている。アベノミクスにより円安が進行した結果、物価上昇と企業収益改善という、労使交渉で賃上げが実現しやすい2条件がそろった影響が挙げられる。

 14、15年の春闘では、円安と消費増税が相まって物価が大幅上昇したことで、労働組合側がベースアップ(賃上げ)を強気に要求した。円安に伴う収益改善を背景に経営側が要求を受け入れる動きが広がったことで、00年代より続いた「ベアゼロ」から脱却し、賃上げ率は2年かけて0%台半ば付近まで上昇した。

今春闘は上昇加速

 今年の春闘は、14、15年の春闘と似た展開になりそうだ。まず、昨年来の物価高騰により、組合側が要求を強気化している。また、円安進行や新型コロナウイルス禍からの経済回復により、製造業を中心に企業収益が改善している。

 非製造業では円安進行のダメージはあるが、人手不足が深刻化している。製造業でも非製造業でも、経営側は組合側の要求にある程度応じ…

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週刊エコノミスト

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