民間投資拡大と財政の持続性確保を 菊池紘平
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政府・日本銀行の共同声明には、「デフレ脱却と持続的な経済成長の実現」に向けた日銀と政府の役割が明記されている。日銀は消費者物価上昇率2%(①物価安定)の早期実現に向けて金融緩和を行い、政府は日本経済の成長力強化(②成長戦略)と持続可能な財政構造の確立(③財政の持続性確保)を推進する──というものだ。
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共同声明から10年、日銀は未曽有の金融緩和を続けてきた。確かに、消費者物価上昇率の継続的な低下という意味でのデフレ状態からは脱却したほか、日経平均株価は2021年に3万円を超え、約31年ぶりの高水準を記録。企業収益をみると、経常利益が過去最高水準で推移している。
もっとも、直近の資源・原材料価格高騰などの外生要因を除けば、物価上昇率2%を継続して達成するには至らず、金融緩和のみに依存した「持続的な経済成長の実現」は困難であることが浮き彫りとなっている。今、改めて②成長戦略と、③財政の持続性確保も併せて進めることの重要性に立ち返る必要がある。このうち②成長戦略は、持続的な経済成長の基盤を成すものだ。金融緩和で成長分野への投資を促す環境整備を行っても、成長戦略が遅れて民間企業が投資機会を見いだせなければ、市中に供給された資金は金融機関に滞留するばかりとなる。
英国の金利急騰
成長戦略の遅れは、政府の取り組みの不十分さだけでなく、実際に投資や付加価値創出を担う民間企業の姿勢をも映じたものだ。スイスの国際経営開発研究所(IMD)国際競争力ランキングによれば、日本企業の経営者自身が「市場環境の変化に対する迅速かつ柔軟な対応」に難があると認めているが、これを克服できていないのが実情である。実際、日本の貯蓄投資バランスをみると、米国やドイツに比べて民間企業の資金余剰が大きく、投資が不足している(図)。結果として、中・長期的な経済の成長力である潜在成…
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週刊エコノミスト
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