国際・政治 FOCUS
ダボス会議 政治より経済で価値ある議論 広木隆
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世界経済フォーラム(WEF)の年次総会、通称ダボス会議が1月20日、閉幕した。「分断された世界における協力」をメインテーマに掲げ、グローバル化と保護主義、インフレと世界経済、気候変動など地球規模の環境課題、そしてロシア・ウクライナ情勢などが議論された。
はじめに総評を言えば、ダボス会議はますます意味のある議論の場ではなくなっている印象だ。WEFは本部があるスイス政府によって2015年に正式に認定された国際機関。各界要人が世界的な課題を議論し、解決策を提言してきたが、近年はその役割を十分果たしているとは言い難い。
例えば、世界の分断の象徴である米中対立。中国からは劉鶴副首相が出席して講演したが、米国のバイデン大統領、ハリス副大統領、ブリンケン国務長官はいずれも出席しなかった。これではダボスは米中対話の機会にもならないということだ。
また、ウクライナへの軍事支援に関する目下の焦点は、欧州諸国がドイツ製戦車「レオパルト2」を供与できるかどうかだ。それを協議するため、50カ国以上の代表者がダボス閉幕の20日、ドイツのラムシュタイン米空軍基地に集まった。つまり、ウクライナ支援に関し、より実際的に重要な議論が展開される場は「ダボスの後」であり、「ダボスの外」なのである。
世界経済に明るさも
国際政治の面では目立った成果がなかったが、経済に関する議論は一見の価値があった。今年のダボス会議では政財界のリーダーが世界経済についてそろって楽観的な見方を示したのだ。日ごろメディアは「インフレ率が高止まっていることから金融引き締めが長期化し、世界経済がリセッション(景気後退)に陥る」と盛んに報じている。そうした紋切り型な見通しとは異なる見方を世界のリーダーが異口同音に示したのは勇気づけられる。
国際…
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週刊エコノミスト
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