経済・企業 社会を変える発達障害
企業の成長を生み出すニューロダイバーシティとは 高田篤史
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米大手企業が取り組む「ニューロダイバーシティ」の動きは成長戦略の柱にもなる。日本航空など日本企業でも取り組みが始まっている。
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行政や政治の分野でニューロダイバーシティ(脳や神経の多様性)への注目が高まってきた。ニューロダイバーシティとは、発達障害を含む脳や神経の違いを、優劣ではなく多様性として尊重し、その個性を生かしていくという考え方のことである。
筆者は2021年3~4月にニューロダイバーシティに係る啓発活動の必要性から、弊社リポート「デジタル社会における発達障害人材の更なる活躍機会とその経済的インパクト──ニューロダイバーシティマネジメントの広がりと企業価値の向上──」 を発信した。当時、海外企業では発達障害のある人の採用プログラムが実施され、自閉症などの当事者を高度なIT職種などに積極的に採用し始めていた。そうした海外企業に話を聞いてみると、ニューロダイバーシティの考え方について、SDGs(持続可能な開発目標)やCSR(企業の社会的責任)の文脈では既に「当然のこと」と認識されていた。その上で、「人材獲得面での優位性」「イノベーションの源泉」などビジネス上の戦略としての意義に着目しているのが印象的だった。
一方、当時の日本にも、類似の活動を進める企業がごくごく一部ではあるが存在していた。しかし、ニューロダイバーシティの概念や意義については、我々が話を聞いた国内企業のほとんどが未知の状態であった。特に、ニューロダイバーシティやそれを含むダイバーシティ、エクイティ(公平性)とインクルージョン(包括性)、つまり職場における全ての人々の公正な扱いと完全な参加については、CSRとして語られはするものの、海外企業のようにビジネスに資する意義が語られることはほぼなかった。
日本でニューロダイバーシティの浸透を図るには、そもそも「なぜ全ての人々の職場での公平な参加を追求する必要があるのか」ということについての理解と浸透こそ重要であると感じたものである。
だがあれから2年がたった今、筆者は変化を感じている。
経産省も政策推進
まず経済産業省で、政策として推進する動きが始まった。同省のホームページでは、デジタル分野にフォーカスし、当分野において企業がニューロダイバーシティを取り入れる意義とその方法論が取りまとめられている。21年12月には、日本財団主催による「就労支援フォーラムNIPPON2021」において、パネルディスカッションが開催され、衆議院議員の河野太郎氏、経産省経済産業政策局長(当時)の平井裕秀氏、ソニーグループ執行役専務人事・総務担当の安部和志氏らが登壇し、ニューロダイバーシティの推進について議論した。影響力のあるステークホルダー(利害関係者)らがニューロダイバーシティ推進について議論する機会が生まれたことは、直近の大きな…
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週刊エコノミスト
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