経済・企業 社会を変える発達障害
発達障害者の「情熱と独創性」に期待する米企業 岩田太郎
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米国では大手企業が発達障害者を積極採用しているが、人材発掘、能力判定、訓練を外部コンサル組織に委ねている場合が多い。
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米疾病対策予防センターによれば、2021年に米国の未成年者44人に1人が自閉症の傾向があると診断され、大学生の12.1%が多動性障害を持っていると報告された。発達障害は決して珍しくない。しかし、コネティカット大学の研究では、発達障害を持つ成人の失業率は30~40%と非常に高く、解決が模索されている。
一方で米国では、発達障害者が持ち前の集中力や記憶力、創造性を生かし、研究分野や芸術、経営面で才能を発揮することがよく知られてきた。
相対性理論を編み出したアルバート・アインシュタイン博士や著名芸術家のアンディ・ウォーホル、さらにはiPhoneを生み出した米アップルのスティーブ・ジョブズ前最高経営責任者(CEO)はよく知られた例だ。近年においては、米航空会社ジェットブルーの元CEOとして業界初の電子搭乗券を考案したデイビッド・ニールマン氏や、米電気自動車(EV)大手テスラの破天荒経営者であるイーロン・マスク氏が有名だ。
米エネルギー大手シェブロンのニューロダイバーシティ担当部長であるトゥワナ・ハーディ氏は、「発達障害者の情熱と創造性は優れた課題解決力を生み出すため、企業はそうした才能を必要としている」と強調する。
米国においては10年代に、パソコン製造のデル、金融のゴールドマン・サックスやJPモルガンなどの大手企業を皮切りに発達障害者の受け入れが進んだ。また、公的機関では米空軍なども発達障害者の採用に積極的である。
このうちJPモルガンでは、外部の研究機関と提携し、入社希望の発達障害者がどの部署の仕事に向いているかを診断してもらい、入社後の配属に役立てている。金融大手キーバンクでは、発達障害者の集中力や細部へのこだわりを生かし、詐欺や資金洗浄(マネーロンダリング)の検知部門で活躍させている。彼らの能力評価が高いことから、同行では採用を拡充している。
会計およびコンサルティング大手のアーンスト・アンド・ヤングやIT大手マ…
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週刊エコノミスト
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