インタビュー「緩和続行の先には資金流出、財政破綻」河村小百合・日本総合研究所調査部主席研究員
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日銀の異次元緩和の10年をどう評価するか。金融政策に詳しい河村小百合・日本総合研究所調査部主席研究員に聞いた。(聞き手=浜田健太郎/金山隆一・編集部)
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── 日銀の異次元緩和が10年続いたメリット、デメリットをどう総括するか。
■最初はそれなりに効果があった。物価はマイナスからプラスに転じたし、株価も上がり、輸出企業を苦しめた超円高は収まった。ただし、問題はその後の対応だ。経済が回復してインフレになれば利上げが必要な局面が出てくるが、今の日銀は利上げができなくなっている。黒田東彦総裁は「2年で2%のインフレ目標」を掲げて国債を大量に買い入れたが、目標を達成できないのは明白だった。未知の政策に関する「実験」の成果を見極める上で、2年は十分な期間だったはずだ。
── 著書『中央銀行の危険な賭け』では、国債を大量購入した結果、日銀が金利を上げれば債務超過になるリスクを指摘している。現時点では0.2%利上げするだけで、日銀のバランスシートの負債側にある当座預金(市中銀行の預け入れ)への付利の水準が、資産側の国債などの平均利回りを上回る「逆ざや」になる。
■国債買い入れ増加とともに増える日銀の当座預金残高は、昨年12月末で約500兆円に膨張した。仮に逆ざやの幅が1%になると、日銀の損失は5兆円。日銀の自己資本は11.9兆円(2022年9月末)であり、1%の逆ざやが2年続けば債務超過すれすれになる。
バランスシートが極端に悪化した中央銀行は、利上げできなくなることが明らかになった。欧米の中央銀行が利上げをして日本との金利差が広がった結果、昨年春まで1ドル=110円台…
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週刊エコノミスト
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