インタビュー「世界基準の金融政策を導入」永浜利広・第一生命経済研究所首席エコノミスト
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日銀の異次元緩和の10年をどう評価するか。金融政策に永浜利広・第一生命経済研究所首席エコノミストに聞いた。(聞き手=浜田健太郎/・編集部)
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── 日銀の黒田東彦総裁下の10年にわたった金融政策をどう評価するか。
■黒田総裁が2013年に就任後、リーマン・ショック(08年)の後に米欧が実施した量的緩和政策を日本も導入し、異常な円高・株安を是正した。株価は3倍近く上がり、雇用が約500万人増えた。グローバル基準の金融政策を導入したことは高く評価できる。
── 日銀は物価目標2%を掲げながら実現できずにいた。しかし、新型コロナウイルス禍やウクライナ戦争が発生し、日本の消費者物価指数(CPI)は昨年12月、前年同月比4%上昇した。
■日銀は「安定的に2%程度のインフレが持続する」経済状況を目指している。賃金、家計所得が増えながら物価が上がる「デマンドプル・インフレ」(需要増によるインフレ)の状況にならないといけない。表面上は日本の物価は4%上昇だが、物価を財とサービスに分けると、「コストプッシュ・インフレ」(生産コスト上昇のインフレ)の要因が大きい財の上昇率は7.1%なのに対して、デマンドプルが大きいサービスは0.8%しか上がっておらず、持続的な物価安定とは程遠い。
── 日銀は今後も異次元緩和を継続すべきか。
■日本では需給ギャップ(総需要と供給力の差)がマイナス圏にある。需要不足の状況で金融引き締めに転じれば、さらに不足が拡大する。コロナ禍以前から日本は深刻な長期停滞に陥っている。金融と財政の両輪で対策しないと経済が回復しない状況にもかかわらず、異次元緩和の間に…
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週刊エコノミスト
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