インタビュー「日銀が甘くみた安倍内閣の力」軽部謙介・帝京大学教授・ジャーナリスト
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金融政策を最優先に掲げた安倍政権。受け入れた日銀内部に葛藤はなかったのか。異次元緩和を徹底取材したジャーナリストに話を聞いた。(聞き手=浜田健太郎・編集部)
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── 日銀の異次元緩和とそれを支えたアベノミクス(安倍晋三元首相の経済政策)はなぜ10年もの長期にわたり継続できたのか、その原動力とは?
■「安倍1強」と呼ばれた安倍元首相の政治的なパワーがその源泉だ。安倍氏はさまざまな手練手管を使いながら、反対派の発言を封じ込め、ライバルだった石破茂氏を自民党幹事長のポストに取り込み、政治闘争に勝つ。「安倍1強体制」のもとで政策が推進されていく。
もう一つの要因が、金融政策を政治の最優先目標に掲げたこと。かつての自民党ではみられなかった政策だ。政治が関係する財政政策の本質は配分だが、金融政策は技術的な議論が多く、有権者にもなじみがない。それが10年続いたのは、政治的なパワーが安倍政権にはあったということだ。
── 安倍元首相は「決められない政治からの脱却」を強調した。
■究極の決められる政治とは“独裁政治”だ。そうした要素が日銀総裁人事にも反映された。安倍政権では、「(強力な金融緩和を行う)リフレ政策をやる」ということで黒田東彦・現総裁が就任した。安倍氏は総裁だけでなく、岩田規久男氏をはじめ副総裁や審議委員にもリフレ派を据えた。人事権をフルに行使して、特定の政策を築き上げるとともに自分の地位を強化した。
結果的にアベノミクスは誰にも止められなくなった。安倍政権の下で、チェック・アンド・バランス(検証と修正)の機能が弱まり、金融政策を「第一の矢」とするアベノミクスという枠組みが見直されることはなかった。
── かつては日銀関係者の大半は、物価安定を達成する上でリスクが高いと、リフレに否定的だった。安倍政権になってなぜ日銀はこれを受け入れたのか。
■それは、日銀の中に…
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週刊エコノミスト
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