インボイス“強行”前に迫られる選択 免税事業者でいるか、課税事業者になるか 植村拓真
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反対の声もある中、今年10月に始まる予定のインボイス制度。負担軽減策の導入も決まり、現場に混乱も見られる中でスタートしようとしている。
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インボイス制度の開始がいよいよ間近に迫ってきた。事業者が納める消費税額の計算に関する新ルール。2023年10月1日からの施行に対応するには、事業者は各国税局のインボイス登録センターに登録申請を行い、「適格請求書発行事業者」になっておく必要がある。
東京商工リサーチの調査によると、22年12月末時点で法人の登録率は8割を超え、制度への対応に向けた準備は徐々に進んできた。だが、個人事業主の登録率は23.7%と、いまだ低水準だ。
登録手続きは終えたものの、社内外への周知や適格請求書の回収・保管方法、帳簿付けなどをどのように行うか、制度開始後の具体的な対応まではできていない事業者も多く、制度開始による大混乱が懸念されている。消費税の納税事務がより複雑化することで事業者の負担増も不安視されている。
反対の声上がるも
ここで、インボイス制度の仕組みを簡単におさらいしておこう。
事業者が納める消費税は、事業者の商品やサービスの販売の際に消費者から預かった消費税から、仕入れや経費の支払いの際に併せて支払った消費税を差し引いて計算する。このとき、預かった消費税から支払った消費税を差し引くことを「仕入れ税額控除」と呼ぶ。これまでは仕入れや経費の支払いの際に受け取った請求書や領収書を保存しておけば仕入れ税額控除が利用できたが、インボイス制度開始後は適格請求書(インボイス)などを受け取り、保存しないと、仕入れ税額控除が利用できなくなる。
消費税は「開業して2年未満」「前々事業年度の課税売上高が1000万円以下」など、一定の条件を満たす小規模な事業者は「免税事業者」として、申告・納税義務が免除されている。ただ、適格請求書は免税事業者では発行できず、免税事業者と取引をした課税事業者はその分の仕入れ税額控除ができなくなる(図1)。
このため、インボイス制度は「課税事業者側で仕入れ税額控除ができない分、免税事業者が値下げ圧力を受ける可能性がある」「免税事業者が取引から排除される恐れがある」と問題点が指摘されてきた。現に、国民からの反対の声も多数上がり、反対するデモや署名活動なども行われていた。しかしながら、そうした声にもか…
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週刊エコノミスト
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