法務・税務

インタビュー「非財務監査へ取り組み強化」茂木哲也・日本公認会計士協会会長

 公認会計士業界を巡る課題について、日本公認会計士協会の茂木哲也会長に聞いた。

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── 監査法人が作成した書類に無資格者が「公認会計士」と記載されていた問題で、協会は18事務所で誤記載があったことなどを発表した。なぜ問題が起きたのか。

■事実を深刻に受け止めている。直接的な原因は担当者の思い込みや確認不足という人為的なミスだった。公認会計士という資格に基づいて仕事をしているという基本的な部分についての意識が薄かったのだと思っている。

── 問題を認識しながら「誤記載」をしていた事例もある。

■公認会計士でない人が「自分は公認会計士だ」と言って(有価証券報告書に記載する人数などの)集計をしたという事案は私が認識している限り、ない。誤って集計されたものについて、「間違っている」と言わなかった人がいた。その人の弱さが出たのだろう。

 監査事務所での職階は、公認会計士として登録されたかどうかにかかわらず上がっていく。事務所に長く在籍しているものの公認会計士として登録をされていない人が、誤って集計された際に「自分は会計士ではない」と言い出せなかったケースなどがある。報酬の問題などではなく、みえや世間体という世界だ。各監査事務所に、再発防止に向けたチェック体制、管理体制の整備を求めている。

IT投資が必要に

── 監査報酬の高額化が指摘されている。ベンチャー企業でIPO(新規上場)を目指す企業が、監査依頼を受けてもらえない「監査難民」と呼ばれる問題も聞く。

■監査はどんどん難しくなっている。デジタル化、IT化が進み、多くの監査法人が対応を求められ、IT関連投資が必要になっている。また企業からの財務諸表の作成や経営管理などを組織内で公認会計士にやってほしいというニーズも高まり、そうした公認会計士への報酬も高くなっている。監査を行う公認会計士に対しても同じような評価をしないといけないが人手が足りない。世間一般で賃上げの話が出ているが、我々の業界も人件費が高くなっている。業界全体で持続可能な報酬をお願いしないと、業務が成立しなくなる。

 上場を目指す企業で希望しても…

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