“脱ロシア”で欧米が加速させた脱炭素・再エネ開発の流れ 安田陽
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脱炭素に懐疑的な日本に対し、ウクライナ侵攻後の世界の潮流は「再エネ加速」となった。
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2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻により、世界のエネルギー情勢は一変した。エネルギーの供給途絶や価格高騰を受け、日本では「脱炭素・再エネどころではない」との見解も多く聞かれる。本当だろうか。
侵攻発生後1カ月もしない段階で、国際エネルギー機関(IEA)は緊急声明(10項目の計画)を公表した。一部を引用して筆者が仮訳すると、次の3点になる。
▽再エネの設備容量の追加を更に迅速に進めるための協調的な政策努力により、24年にはさらに20テラワット時(テラは1兆)を供給できる。ほとんどは(中略)大規模風力・太陽光発電のプロジェクトだ。
▽屋根置き太陽光発電システムの導入を早めれば、消費者負担を軽減できる。(中略)屋上太陽光発電は、最大で15テラワット時増加する。
▽適切な優遇措置と持続可能な供給があれば、バイオマス発電は22年に最大50テラワット時を増加できる。
緊急声明では、右の引用に続き、原子力も20テラワット時増加できると書かれているが、注目すべきは優先順位で、登場順では①風力+太陽光②バイオマス③原子力、発電電力量順であれば①バイオマス②太陽光+風力③原子力、となる。「再エネどころではない」ではなく、むしろ、再エネこそが優先的に述べられていることがわかる。
侵攻後、速やかに声明を出したのはIEAだけではない。国連は22年4月22日の段階でプレスリリース(日本語訳もあり)を発表しており、次のように要約できる。
「今こそ危機を機会に変える時だ。石炭やその他全ての化石燃料の積極的段階的廃止と、再エネ導入と公正な移行の加速化に向け協力しなければならない」
さらに欧州連合でも、4月22日にフォンデアライエン欧州委員長の声明で「我々がすべきことはロシアの化石燃料からの多様化だけでなく、再生可能エネルギーに対する大規模投資だ」(筆者仮訳)との発言がみられる。また、先立つ3月26日にバイデン米大統領は演説で「長期的には、経済安全保障と国家安全保障の問題として、また地球の存続のために、私たちは皆、クリーンで再生可能なエネルギーにできるだけ早く移行する必要がある」(筆者仮訳)とした。
このように、世界の主要機関や国・地域のリーダーたちは、次々と「再エネ導入の加速化…
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週刊エコノミスト
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