ゴミ屋敷の隣人などが“管理人”選任を裁判所に求められるように 吉田修平
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民法改正によって新たに「管理不全土地・建物管理人」制度が始まる。使い方などをまとめた。
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4月1日から施行される改正民法によって、その土地や建物の所有者は判明しているが、管理不全によって他人の権利などが侵害されるおそれがある場合は、次のような対応をすることが可能になった。
「所有者による土地または建物の管理が不適当であることによって他人の権利または法律上保護される利益が侵害され、または侵害されるおそれがある場合」に、「利害関係人」(権利または法律上保護される利益が侵害されたり、侵害されるおそれがある人)が裁判所に請求することで、必要があると認める時は、その土地や建物に関して「管理不全土地管理人」「管理不全建物管理人」による管理が命じられる。
この命令は「管理不全土地管理命令」「管理不全建物管理命令」と呼ばれ、前者の場合、命令の効力は対象の土地にある動産(ただし、当該命令の対象とされた土地の所有者等が所有するものに限る)にも及ぶ。建物の場合も同様だ。管理人には、法的判断が必要となるケースでは、弁護士や司法書士などの法律専門職を選任することが想定される。
改正により、実際にどうなるのか。事例で説明しよう(図)。
Aさんが所有している土地と建物は放置されており、建物にひび割れや破損が生じている。BさんはAさんの隣に土地と建物を所有して住んでいるが、Aさんの建物がBさんの所有地に倒れるおそれがあり、さらに、Aさんの庭には大量のゴミが放置され、悪臭が発生している。Aさんは遠隔地に居住していて、この土地と建物に全く関心がない様子だ。こうした場合、Bさんはどのような対策ができるのか。
土地・建物の処分も
現行法では、こうした場合に関する特別の規定がないので、BさんはAさんに連絡を取り、改善をお願いするしかない。Aさんと連絡が取れなかったり、連絡がついてもAさんが全く無関心で対応をしてくれないような場合は、Bさんは何も打つ手がない。
ただし、Aさんの建物が台風などでBさんの自宅に倒れかかってくるなど、現実に切迫した危険が生じるような場合は、Bさんは「所有権に基づく妨害予防請求権」の行使により、Aさんに予防的措置を取らせたり、実際に建物が自宅に倒れてきた場合は、「妨害排除請求権」の行使によって建物の除去をAさんに請求することが可能だ。ゴミの悪臭につい…
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週刊エコノミスト
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