経済・企業

JR北海道・四国生き残りへ 問われる柔軟かつ大胆な発想 大塚良治

北海道ボールパークFビレッジの最寄り駅・北広島駅(筆者撮影)
北海道ボールパークFビレッジの最寄り駅・北広島駅(筆者撮影)

 国鉄民営化の際に「三島会社」(北海道・四国・九州)は営業赤字想定で発足したが、上場を果たしたJR九州に比べて、JR北海道とJR四国の状況は厳しく、地方路線の存続が危ぶまれている。

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 JR千歳線で新千歳空港から札幌へ向かう途中、北広島駅を過ぎると左手に真新しい建築物が見えてくる。間もなく開業するプロ野球・北海道日本ハムファイターズの新本拠地「北海道ボールパークFビレッジ(BP)」(北海道北広島市)だ。JR北海道広報部は「多くのお客様にご利用いただける大きなチャンス」と期待を示し、「最寄りとなる北広島駅でお客様に安心・安全にご利用いただけるよう準備を進めている」と現状の取り組みを説明する。

 BP開業で千歳線の乗車人員増が見込まれるJR北海道だが、経営は厳しい。2022年までにJR東海を除く旅客5社が利用の少ない路線の収支公開で足並みをそろえたが、JR北海道は16年11月に「当社単独では維持することが困難な線区について」(以下「維持困難線区」)を発表している。19年3月には、JR四国も線区別収支を公表した。

 1987年の国鉄分割民営化に伴い発足したJR7社(北海道、東日本、東海、西日本、四国、九州、貨物)のうち、「本州3社」(東日本・東海・西日本)とJR九州は株式上場したが、未上場JR3社(北海道、四国、貨物)の上場は未定だ。

「三島会社」(北海道・四国・九州)は、設立当初から営業赤字が想定され、経営安定基金や固定資産税等の減免などの経営支援が整えられた。その中で、JR九州は不動産や流通などの非鉄道事業により営業黒字を確保して、唯一完全民営化を実現した。

 また、JR貨物は、旅客会社に「アボイダブルコスト(AC)ルール」(貨物列車走行で旅客会社に追加的に発生する経費のみを負担するルール)で算定される線路使用料を支払って、貨物列車を運行する体制となった。

線路使用料上乗せを

 ACについては、旅客会社とJR貨物の意見の相違が鮮明だ。21年度に20億円をJR貨物から受け取ったJR北海道は「線路使用料で回収できる金額はごく一部である」としたうえで、「ACを否定はしないが、現在のルールでは、ACが適正に算出できていないと認識しており、引き続き関係者と相談していく」(同社広報部)と説明する。同年度に約5800万円の線路使用料を収受したJR四国も「毎年行っている旅客会社と貨物会社での協議を今後も続けたい」(同社広報室)との立場だ。

 対するJR貨物は「国鉄改革で『三島会社に対する経営安定基金』『本州3社・貨物会社に対する債務承継』等の収益調整が措置された。当社に設定されたACルールは、全国一元の貨物鉄道輸送と、当社の安定経営の両立に不可欠」(同社総務部広報室)と一歩も引かない。

 一方、ACは整備新幹線の並行在来線を運営する三セク各社には適用されず、ACの金額と請求金額の差額が「貨物調整金」として政府機関からJR貨物に補填(ほてん)されている。21年度はJR貨物から三セク各社に146億円強の線路使用料が支払われたが、うち「貨物調整金」が約136億円と…

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