マーケット・金融

UBSに買収されたクレディ・スイスの社債2.3兆円が紙くずに 小田切尚登

クレディ・スイスの社債所有者から批判が続出 Bloomberg
クレディ・スイスの社債所有者から批判が続出 Bloomberg

 スイス2大銀行の一つであるクレディ・スイスが、同じく2大銀行のUBSに買収される形で167年の歴史に幕を下ろす。

 3月19日に発表された買収額は30億スイスフラン(約4300億円)。さらに、クレディ・スイスの内情には不安な要素が多いため、スイス政府が90億スイスフラン(約1兆2800億円)の保証をすること、そしてスイス中央銀行が1000億スイスフラン(約14兆3000億円)の緊急クレジットライン(融資の限度額)を設定することも買収条件に盛り込まれている。

 そもそもクレディ・スイスは近年、多くの火種を抱えていた。同行のようなプライベートバンキング(富裕層向け金融)は、顧客の秘密保持が売りとなる。しかし、2000年代に入って、この売りを覆すような問題がたびたび発覚。特にここ1~2年は、麻薬組織のマネーロンダリングへの関与、自社幹部に対するスパイ行為、1万8000件以上の口座情報の流出などの不祥事が立て続けに起こっている。投資銀行業務もリスク管理の弱さから、大きな損失を繰り返し出す状況だった。

「次はドイツ銀」の声も

 今回の買収でも一つの問題が起きた。それは株式と債券の両方の特性を持つ「AT1債」の扱いだ。

 クレディ・スイスは自己資本強化のために160億スイスフラン(約2兆2700億円)のAT1債を発行していたが、買収にあたってスイス連邦金融市場監督機構(FINMA)は、すべてのAT1債…

残り706文字(全文1306文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事