金利上昇で資金は債権市場から日本株へ 自社株買い企業に注目 武者陵司
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今後1年間、金利趨勢(すうせい)はねじれ現象が特徴となる。米国ではインフレのピークアウトで金融緩和が視野に入っている。長期的な実質金利(自然利子率)の低下趨勢は続いている可能性が高く、10年国債利回りは2.5%程度を目指すだろう。しばらくドルに下落圧力がかかるが限定的で、この金利低下がイノベーションを加速し、次の景気拡大圧力を高める。チャットGPT、ウェブ3など新たな技術進化が見えている。
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米国の半導体供給能力の拡大とシェアの回復を目指すCHIPS法、IRA(インフレ抑制法)など米中対立と気候変動対策を視野に入れた公的資金投入による産業政策もイノベーションを加速する。株式投資は再度ハイテク株に向かうだろう。ドルは2023年後半以降の米国景気再拡大局面では上昇傾向を強めるだろう。
日本では逆に長期デフレの終焉(しゅうえん)、日銀の緩慢なる長期金利上昇容認姿勢により、金利は緩やかに上昇トレンドに入ろう。昨年の英国年金危機、シリコンバレー銀行(SVB)破綻は金利急騰局面における債券保有の危険性を思い知らせた。いずれ日本でも確実に到来する債券暴落に早めに備える必要がある。黒田東彦前日銀総裁の最後の政策変更、イールドカーブ・コントロール(YCC、長短金利操作)の上限引き上げは、銀行・生保・機関投資家の債券保有のリスクと残された時間が多くないことを告げた。植田和男日銀総裁は円高再燃を警戒して異次元金融緩和とYCCの大枠を維持するとみられるが、その政策に関わりなく日本債券市場からの大脱走が始まるだろう。その向かう先は日本株式と国内不動産しか考えられない。
好循環が起きる
そして岸田文雄政権の「新しい資本主義」政策が機能し始めた。当初の主張であるアベノミクス批判と見える分配重視の内容を換骨奪胎し、「成長と分配の好循環」という事実上のアベノミクス路線に回帰した。成長追求の柱として「資産所得倍増プラン」を提示したが、それは日本株式需給を大きく変化させよう。個人投資家を対象にした「NISA(少額投資非課税制度)」改革により1090兆円の個人預金から株式への大きな資金の流れを作るだろう。
また企業がもうけをため込み過剰貯蓄による資本効率の悪さが日本株安の原因となってきたが、東証による「PBR(株価純資産倍率)1倍割れ是正要請」により潮目は変わった。ア…
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週刊エコノミスト
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