マイナス金利は来年中に解除の可能性も 小玉祐一
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シリコンバレー銀行(SVB)の破綻に始まった米国の金融不安が、今後どのくらいの広がりと深さを見せるのかは、いまだ不透明だ。SVBのALM(資産・負債の総合管理)がずさんだったことは否定できないにしても、他の多くの金融機関が似たような運用をしている。格付け会社はSVBと同様に預金が短期間で増え、預金保険の対象にならない預金の割合が多い米銀の格下げを検討・実施中だ。こうした銀行群の株価はすでに急落している。
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預金者保護を担う米連邦預金保険公社が発表したデータによると、米銀は2022年後半時点で債券ポートフォリオに約6000億ドル(約79兆円)もの含み損を抱える。これは自己資本の3割に相当する。リーマン・ショックの時のように、巨大なバブル崩壊が背景にない分、「伝染性」は低いとはいえ、時間とともに経営難に陥る金融機関が続出する可能性は残る。しばらくは事態の推移を慎重に見極める必要がある。
これで、米国経済のソフトランディングは一段と難しくなった感が強い。米金融当局の行動が早いこともあり、比較的早期に沈静化に向かう展開も期待できないわけではないが、その場合、インフレが再加速するリスクもある。米連邦準備制度理事会は3月の連邦公開市場委員会(FOMC)で0.25%の利上げにとどめたが、5月以降再び利上げを加速せざるを得なくなる展開もありうる。逆に早期の利下げに追い込まれる可能性もあり、先行きのFOMCの予想にこれだけ幅が必要な状況は珍しい。先行きの不確実性が高いことの表れだ。
年末に1%超か
こうした中、日本では日銀の植田和男新総裁の初動が注目される。植田氏は2月、国会の所信聴取で金融緩和の継続を強調する姿勢が目立ったが、修正作業まで否定するものではなかった。イールドカーブ・コントロール(長短金利操作)の“金属疲労”は明らかだ。金融不安が高まるような状況ではさすがに動けないにしても、国債に過度な売り圧力がかからない局面のほうが、金融政策を柔軟化する作業は手掛けやすい。金融市場の小康状態が続くようなら、最初の一歩は早いのではないか。
手段としては…
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週刊エコノミスト
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