植田日銀が政策金利をプラス修正できれば1ドル=120円も 深谷幸司
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植田和男日銀新総裁は超金融緩和政策の修正に手をつけるのか。イールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)、大規模な量的金融緩和、マイナス金利はいずれもデフレ脱却を目的とする異例の措置だ。世界はインフレの時代に逆戻りしたとの見方が強い。日銀の政策修正はしかるべきだろう。日銀が政策金利の操作を中心とする通常の金融政策に回帰する可能性は高い。
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日銀がYCCを撤廃することで懸念される長期金利が急騰するリスクは低下している。欧米では景気やインフレが鈍化し、長期金利はピークアウト。米国に端を発する金融システム不安は、投資家がリスク回避を強め、欧米の長期金利は大きく低下した。海外からの長期金利上昇圧力は緩和している。日銀が長期国債の利回り変動上限を撤廃して市場に金利形成を任せたとしても、金利が急騰する可能性は低く、支障はなさそうだ。
マイナス金利はどうか。日銀が政策金利を0%かそれ以上に引き上げれば、国内銀行の業績不安を解消する一助となりうる。年内には、日銀は少なくとも0%に戻しているのではないか。春闘で賃上げが明確になる中、米国の景気が24年に底打ちして持ち直す気配をみせれば、日銀が政策金利を若干のプラスとすることもありうる。
一方、1年後も日銀がマイナス金利を維持しているとすれば、海外景気の悪化、金利低下が著しい場合ではないか。欧米の金融システムの混乱が尾を引いている場合も同様だ。理論派で国際金融情勢に通じる植田総裁が内外景気や海外金利のトレンドを重視し、利上げを躊躇(ちゅうちょ)する可能性もある。
ドル買いの魅力とリスク
それらの見通しを踏まえてドル・円相場の動向を想定してみたい。為替相場は相手国のファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)や金利の動向にも左右される。日銀の政策変更ばかりでなく、米国の景気や金利動向も考慮すべきだ。
米国の景気が悪化し、ドル金利に先安感が続く中、ドル安・円高基調は続くとみられる。日銀の政策変更はその強弱を左右する程度のインパクトとなるのではないか。市場は日銀が今後、YCCを撤廃することを織り込み済みだ。…
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週刊エコノミスト
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