経済・企業

トヨタ・ホンダ・日産・マツダの最新EV戦略 河村靖史

 脱炭素化に向けては電気自動車(EV)一辺倒から、水素や合成燃料、バイオ燃料などの活用を目指す動きがある。主要日本メーカーの戦略を追った。

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 5月19日から21日まで広島で開かれる主要7カ国(G7)首脳会議を前に、札幌市で気候・エネルギー・環境相会合が4月15、16日に開催された。運輸部門の脱炭素化に関して、2035年までにG7保有車両からの二酸化炭素(CO₂)排出量を00年と比べて50%削減を目指すことや、脱炭素化に向けて「多様な道筋で実現する」ことで合意した。自動車の脱炭素化は従来、EV一辺倒だったが、水素や合成燃料などを活用する流れに変わってきた。

 背景にあるのが、自動車大国ドイツ主導で、EU(欧州連合)が35年に内燃機関を搭載した新車販売を禁止する方針を修正、合成燃料を使用する内燃機関車の販売を容認する姿勢に転じたためだ。ハイブリッド車(HV)に強く、グローバルで事業を展開しているトヨタ自動車、ホンダを抱える日本政府は以前から、EV一辺倒に反対、市場ごとに適した環境対応車を展開する「多様な選択肢が重要」と訴えてきた。

 ただ、EVシフトの潮目が変わるかというと難しい。G7には世界最大の自動車市場で、EV販売が急増している中国が入っていない。独フォルクスワーゲン(VW)は新車販売の約4割を中国が占め、中国市場を攻略するため、投資の多くをEVに集中している。

 中国は23年にも市場全体の35%がEVになるとの予想がある。VWだけでなく世界中の自動車メーカーが中国市場に重点を置いている。各社のEV重視の姿勢は変わらない。

 G7メンバーである米国のバイデン大統領も30年に小型車の50%、中大型車の30%について、EVなど走行中にCO₂を排出しないゼロエミッション車とする目標を掲げ、EVシフトが加速する。

 日独などEVに否定的な一派が期待する合成燃料は、コストが高いことや、製造に多くのエネルギーが必要なこと、エネルギー効率が低いことなどから実用化に向けたハードルが高い。すでに多くの自動車メーカーが将来が見通せない内燃機関の開発をストップしたり、その規模を縮小したりしている。合成燃料で内燃機関が延命できるとは想定していない。

 G7が多様な選択肢を打ち出すのは、EV普及が加速するスピードを落とし、先進国の自動車メーカーがEVを開発するまでの時間稼ぎとも見てとれる。

トヨタ自動車 「全方位戦略」は継続

「EVファースト」。4月1日付で佐藤恒治氏が社長に就いたのを機にトヨタ自動車は出遅れていたEV巻き返しに本腰を入れる構えだ。

 4月7日の新経営体制方針説明会で、26年までにEVを新たに10モデル市場投入して、販売台数を年間150万台とする計画を打ち出した。22年のトヨタのEV販売台数は約2万4000台だったため、3年間で販売規模を60倍超…

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週刊エコノミスト

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