基礎から理解する脱炭素のキーワード10 牧之内芽衣
有料記事
難解な用語も多い「脱炭素」。10のキーワードで解説する。
>>特集「広島サミットで考える」はこちら
①GX(グリーントランスフォーメーション)
化石燃料からの脱却を含む、クリーンエネルギー中心の産業・社会構造への変革を指す。世界中で異常気象やそれに伴う食糧難が問題となっており、気候変動対策は国連のSDGs(持続可能な開発目標)にも掲げられる世界共通の課題だ。日本も2050年に温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」を表明しており、その実現に向けてGXは必須の取り組みとなる。
22年6月に岸田文雄内閣が閣議決定した「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」では、GXが重点投資分野の一つに位置付けられている。また、23年2月に閣議決定した「GX実現に向けた基本方針」には、原子力の活用をはじめ、政府が発行する「GX経済移行債」を呼び水に10年間で150兆円のGX投資を実現する計画や、炭素の排出量に応じた金銭的負担を求めるカーボンプライシングの構想が盛り込まれた。
GXは、DX(デジタルトランスフォーメーション)に次いで経済産業省が提唱した造語だ。23年4月の主要7カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合では、米国から「GXの定義が曖昧だ」と指摘されるなど、GXは必ずしも世界共通語ではない。しかし、気候変動対策という目標は世界共通といえるだろう。
②COP(コップ)
「締約国会議」の略称で、国際的な条約の加盟国による決定機関全般を指す。最も多く目にするのが国連気候変動枠組み条約のCOPで、「UNFCCC」と表記されることもある。
2022年11月にはエジプトのシャルムエルシェイクで気候変動枠組み条約のCOP27(通算27回目の会合)が開催された。主だった成果として、途上国から要望されていたロス&ダメージ(気候変動の悪影響に伴う損失および損害)に対する基金の創設についての合意がある。
次回は23年11月末からアラブ首長国連邦(UAE)でCOP28の開催が予定されている。産油国での開催とあって、温室効果ガス削減に向けて積み上げられてきた取り組みが骨抜きにならないかと警戒を強める環境NGOもある。
③パリ協定
2015年、フランス・パリにおいて開催されたCOP21で、温室効果ガス排出削減などに向けて採択された国際枠組み。同協定では産業革命前からの地球の平均気温上昇を2度以内、可能な限り1.5度に抑える努力を追求する世界的な目標が設定された。また、すべての参加国が削減目標を5年ごとに提出・更新することも義務付けられた。
各国の目標は第三者による評価を受けることになっている。さらに、世界全体の進捗(しんちょく)を各国の目標更新や取り組み強化につなげる仕組み「グローバルストックテーク」が設けられている。そのため、世界全体で脱炭素の取り組みが遅れれば、達成に向けてその後はより厳しい目標が課されることになる。
なお、21年に英国・グラスゴーで開かれたCOP26で、努力目標であった1.5度が事実上の目標に格上げされた。日本は「30年度46%削減」(13年度比…
残り3176文字(全文4476文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める