インタビュー「日本は石炭火力の廃止時期を明示すべきだった」橘川武郎・国際大学副学長
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日本の気候変動対策には国際的に「消極的」との批判の声も上がっている。エネルギー政策に詳しい国際大学の橘川武郎教授に話を聞いた。(聞き手=安藤大介・編集部)
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── 主要7カ国(G7)首脳会議(広島サミット)を前に、4月に札幌市で開かれたG7の気候・エネルギー・環境相会合では、3月に国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表した報告書を踏まえ、「世界の温室効果ガスを2035年までに19年比で60%削減することの緊急性が高まっている」と明記しました。
■「19年比で60%削減」は本会議(広島サミット)でも盛り込まれるだろう。これはとても厳しい目標だ。日本は菅義偉政権時代に目標を引き上げ、30年度に13年度比で46%削減すると示したが、13~19年の間に日本の温室効果ガスの排出量は14%減っている。“発射台”も下がっているということで、13年比で66%削減しないといけないということになる。
── 日本の姿勢には「石炭火力発電を温存している」という欧米からの批判が根強くあります。
■石炭火力発電こそ日本の強みだ。世界で二酸化炭素(CO₂)を出しているのは先進国ではなく、新興国だ。新興国では石炭火力の比率が高く、今でも、世界の電源のトップは石炭で4割くらいある。欧州流の「石炭をやめろ」というやり方では、新興国にとっては手の打ちようがなくなってしまう。石炭火力を使いつつ、アンモニアや水素を化石燃料と混焼するアンモニア混焼に変えていくという日本が主張するやり方は、世界の国の中で唯一、建設的な形で提言をしている。だが、世界の評価は全く逆というのが現状だ…
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週刊エコノミスト
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