インタビュー「じわりと広がる人民元国際化」柯隆・東京財団政策研究所主席研究員
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基軸通貨ドルの現状と行方を海外はどう見ているのか、海外出身のエコノミストに聞いた。(聞き手/谷道健太・編集部)
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中国政府は長い間、人民元を決済通貨として国際化させようとしてきた。ただ、世界の貿易や金融取引に占めるシェアは2%ほどでしかなく、すぐさまドルに代わることはありえない。
人民元の国際化を妨げている要因の一つは、中国政府が資本取引の自由化に慎重な姿勢を崩していないことだ。自由化すればキャピタルフライト(資本逃避)が起きる心配があるほか、人民元が海外で大量に使われるようになれば、中国の金融政策に影響を及ぼす可能性がある。米国は度重なる金融危機を経験し、自国通貨をコントロールする仕組みを持つが、中国はそのような経験が乏しい。
もう一つの要因は、資本取引を自由化していないために資本市場の開放・国際化が大幅に遅れていることだ。最大の原因は市場経済型の金融制度改革が大幅に遅れていることだろう。そのような事情がありながら、中南米の一部、マレーシア、中東が最近、貿易決済に人民元を使い始めるか検討すると表明している。
中南米の一部は長年、ドルを自国内で流通させる「ダラーライゼーション(ドル化)」を推進し、メリットを享受した半面、債務危機に陥るリスクにさらされるなどのデメリットも被ってきた。そこでドルへの過剰な依存を減らそうとしてきたが、ドルに代わる通貨を見つけられずにいた。ここにきて、資源や農産物の対中輸出が多いアルゼンチンとブラジルが、それらの品目の決済に人民元を導入しようとしている。
マレーシアの3事情
マレーシアには三つの事情がある。
一つ目は1997年、ヘッジファンドがタイ・バーツを売り浴びせたことを契機に同国が外貨不足に陥り、マレーシアや韓国などに飛び火したアジア通貨危機の反省だ。危機後、アジア諸国のドル依存からの脱却が急務となった。…
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週刊エコノミスト
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