インタビュー「ドル依存を減らせない対中の貿易構造」エミン・ユルマズ・エコノミスト、複眼経済塾塾頭
有料記事
基軸通貨ドルの現状と行方を海外はどう見ているのか、海外出身のエコノミストに聞いた。(聞き手/谷道健太・編集部)
>>特集「上がる金&揺らぐドル」はこちら
中国、ロシア、サウジアラビアのような国々は、以前からドルへの依存を減らそうとしてきた。中露は独裁政権の国であり、サウジも宗教原理主義に基づく独裁に近い権威主義国だ。
私の考えでは、世界は「新しい冷戦体制」に入った。一党独裁の権威主義国と米欧日など先進国からなる民主主義国の対立だ。権威主義国は「戦争が起き、利害が衝突する民主主義国が基軸通貨ドルを武器として使う時に被るリスクを軽減したい」と考えてきた。昨年のウクライナ侵攻後、民主主義国がロシアの海外資産を凍結した措置はその懸念が実現した例だ。また、ドル依存を減らすことで、米国がドルを武器として使う力を弱体化させたいという思惑もあるだろう。
ブラジル、アルゼンチン、インドは第3グループだ。過去30年間に進んだグローバル化の中、米中と友好関係を保って投資を受けてきた。今、新冷戦体制が始まり、「どちらの陣営に入るか」という踏み絵を突き付けられている。第3グループは権威主義国のような戦略に基づく行動というより、選択肢を増やす目的でドル依存を減らそうとしている。
ただし、権威主義国や第3グループがすべてドル依存を減らそうとしているのではない。例えば、中国との貿易関係で輸出入のバランスが取れていれば、人民元建て決済は機能する可能性があるが、輸出入が偏っていれば機能しない。人民元建て決済が拡大する中国とブラジルの関係や、中国とサウジアラビア、中国とロシアの貿易バランスは均衡に近い。
しかし、私の出身地のトルコは対中貿易収支が大幅な赤字だ(同国外務省ウェブサイトによれば、対中貿易赤字は2015~21年の間、年159億~285億ドル)。仮に人民元で決済しようとすれば、トルコは流動性に乏しい人民…
残り882文字(全文1682文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める