締め切り迫る! 12月26日まで。新規会員は2カ月無料「年末とくとくキャンペーン」実施中!

国際・政治 ワシントンDC

移民の女性リーダーが米政府の新たな“顔”に 小林知代

AI絡みの犯罪への対応も重要な役割(ワシントンDCの米連邦取引委員会本部) Bloomberg
AI絡みの犯罪への対応も重要な役割(ワシントンDCの米連邦取引委員会本部) Bloomberg

 人工知能(AI)の進化や普及に伴い、新技術を悪用した事件が増えてきている。SNS(ネット交流サービス)に投稿された動画などから入手した情報を元に、人間の声をデジタル的に複製。家族や親しい人を装い、お金や仮想通貨をだまし取るという、これまでSF小説の世界で描かれてきたような出来事が、現実に起きている。

 AIの陰の部分が社会を揺るがす中で、新たに生じる犯罪の取り締まりなどを担当するのが米連邦取引委員会(FTC)だ。

 FTCは、消費者保護と公正な競争を目指しており、米国の省庁の中で特に多忙な状況にある。アマゾン、グーグルなどのビッグテック(巨大IT企業)の独禁法問題に関する調査に始まり、悪質なオンラインショッピング、健康に効くとされる有機食品を巡る誇大広告の取り締まり、AIを使った差別、プライバシー保護の問題など、デジタルを巡る違法行為や、対応すべき事例は枚挙にいとまがない。

ベトナム系の女性

 こうした問題に対処するために、FTCは2023年2月、「ニューテクノロジー対応部」を新設した。率いるのは、ベトナムからの「難民2世」で、ベンチャー企業の経営者から転身したステファニー・グエン氏である。

 グエン氏の父親は、グローサリー(食料販売店)の店長を務め、土日には青空市場で家具を売って生計を立てていた。典型的な移民家族で育ったグエン氏は、ハーバード大学で公共政策を学び、マサチューセッツ工科大学では、米国のメディケア(高齢者向け公的医療保険)の利用者が、より効率的に保険を受けられるようにするシステム開発に携わった。その後、体に装着して健康状態を測るウエアラブル端末のアプリなどを開発し、ベンチャー企業も興した。

 このままでも、シリコンバレーで大成功をおさめていただろうグエン氏だが、「公に尽くしたい」という気持ちが政府へと引き寄せた。技術を理解している人間が、取り締まりの立場を担うことに意義…

残り539文字(全文1339文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)が、今なら2ヶ月0円

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

12月24日号

日本経済総予測202516 インタビュー 宮川努 学習院大学経済学部教授 戦後80年の日本経済「何もしなければ80年前に逆戻り 躍進の日本サッカーをモデルに」20 チーフエコノミストに聞く 2025年日本経済見通しアンケート■末廣徹/武田淳/酒井才介/斎藤太郎/青木大樹22 植田日銀 金融正常化へ「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事