多重事実婚のポリアモリー マサチューセッツ州で権利を認める条例拡大の動きも 峰尾洋一
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生物学上の1組の男女が出会い、2人は結婚し、夫婦になる。子供が生まれ、彼らが両親になる。こうした一昔前までの常識でくくれない新たな形態が生まれ、徐々に広がっている。
「ポリアモリー」。オックスフォード英語辞典に、この単語が掲載されたのは2006年。その定義は「関係者全員の合意を前提に、3人以上によって、性的行為を伴う恋愛関係を実践すること」。これは、婚姻を伴わない点で米国でも違法とされるポリガミー(多重婚)と異なる。訳すと「多重事実婚」とでもいえようか。
ポリアモリーでは、異性間・同性間・女性や男性とノンバイナリー(男性・女性という明確な性自認のない)間といった、柔軟な性自認に基づく関係の3人以上がパートナーとなるケースもある。
ここ数年、ポリアモリー関連の動きが主要メディアで取り上げられるようになった。きっかけの一つは、20年7月、マサチューセッツ州サマービルで制定された条例である。同条例はポリアモリーを婚姻に準ずるものと認め、夫婦間と同様に、1パートナーの医療保険で他に2人以上のパートナーをカバーする道を開いた。一般的なドメスティック・パートナー(事実婚で同棲(どうせい)する2人)の権利を認める動きは、地域差はあれ拡大しているが、ポリアモリーまで広げたのは、この条例が全米で最初である。
条例成立には新型コロナウイルスの感染拡大が関連する。医療アクセスの有無が生死を分ける環境下で、保険カバー拡大を認める動きにつながった。
同様の動きは同州内で広がっている。21年3月にはケンブリッジで、翌4月にはアーリントンで、同様なポリアモリーの権利を認める条例が施行。サマービルでは、今年に入りポリアモリーへの差別を禁止する新たな条例も可決された。
増える関連する裁判
公的支援に並行して、ポリアモリーに係る裁判も目立ってきている。20年、カリフォルニア州で、ポリアモリー関係の男性3人が代理…
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週刊エコノミスト
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