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需要回復が好調な空の旅を待ち受ける暗雲とは 吉村亮太

3月の米シカゴ・オヘア国際空港では入国審査待ちの長い列ができていた 筆者撮影
3月の米シカゴ・オヘア国際空港では入国審査待ちの長い列ができていた 筆者撮影

 この3年間、飛行機で行くような旅行から遠ざかっており、「今年の夏休みこそ少し足を延ばそう」と思っている人が多いのではないだろうか。

 だが米国内を移動したり、米国から海外へ行ったりするには相当のストレスがかかることを覚悟せざるを得ない状況にある。それは一言でいえば、パンデミックでいったん大きくへこんだ後の旅客数の爆発的な伸びに、企業側も政府側も対応が追いついていないからということになる。原因をひとつずつ見てみよう。

 まずは航空会社の人手不足。直近の政府統計を見ると、この1年の間にチケット代は2割近くも上昇しているが、大手オンライン旅行代理店によれば、この夏の国内旅行は25%、海外旅行に関する検索数は2倍以上伸びているとのことで非常に好調だ。

 一方、便数の増加にパイロットや客室乗務員などのローテーション勤務が追随できず、国内便ではすでに運航に支障を来している。航空会社のパイロットの資格を取得するには1500時間の総飛行時間が求められるが、求人難を緩和するために、フライトシミュレーターで一部を置き換えるなど、この基準を緩和すべきとの意見もある。決して楽な稼業ではないのはわかるが、供給不足を反映してパンデミック前に比べてパイロットの給与は3割上昇しているというから驚く。

 第二は航空管制官の不足。全米の航空管制をつかさどる連邦航空局(FAA)によれば、パンデミック期間中の採用活動や訓練が停滞したせいで、相当なしわ寄せが来ているという。特に空のダイヤが過密な米国北東部が深刻で、ニューヨークやワシントン地区の空港の発着を減便せざるを得ないような状況にまで追い詰められてしまっている。最近ニアミスのニュースを時々、耳にするようになったが、生命に直結することなので問題の早期解消をお願いしたい。

2時間待ちの入国審査

 第三は入国審査官の不足。最近、筆者自ら経験したことだが、米国に到着した際の入国…

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週刊エコノミスト

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