年末の金価格は「2300ドル」も “脱ドル”進み非西側が買い増す可能性 吉田哲
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金相場が記録的な高値圏で推移している。4月以降、ドル建て(ニューヨーク先物)は1トロイオンス当たり2000ドル前後、円建て(大阪先物)は1グラム当たり8800円前後を維持している。金相場を変動させる要因は複数あるが、「中央銀行」が足元の高騰劇に深く関わっているとみられる。
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ウクライナ危機勃発を機に西側と非西側の「分断」が深まる中、ロシアや中国、インドなど非西側諸国の代表格といえる国々の中央銀行は、金の保有量を大きく増やした。戦時下で相手を利する行為を避ける狙いがあるとみられる。
これらの国は、自由度や民主度が低い傾向がある。スウェーデンのイエーテボリ大学V-Dem研究所が公表している「自由民主主義指数」(0~1の間で0に近いほど非民主的な傾向が強い)では、2022年のロシアの同指数は0.071、中国は0.040、トルコは0.118、インドは0.306だ。
脱西側の流れが加速
ロシア、トルコ、インドの同指数は00年以降、低下しているほか、中国は恒常的に低位にある。特に10年以降に起きたインドとトルコの急低下は目を見張る。西側との協調が期待された両国の同指数の急低下は、世界全体が西側と非西側に、真っ二つに切り裂かれた印象を醸し出している。
10年ごろから「脱西側(脱ドルを含む)」が目立ち始めた背景には、西側への不信がある。リーマン・ショックが、西側の金融システムがリスクをはらんでいることを浮き彫りにしたり、リーマン・ショック後に西側主要国が行った大規模な金融緩和が、将来の信用リスクを膨張させたりした。
また、西側がSDGs(持続可能な開発目標…
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週刊エコノミスト
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