資源・エネルギー

GX推進のための新型原発 小型炉から核融合炉まで 本橋恵一

鹿児島県薩摩川内市の九州電力川内原発。3号機の建設計画がある
鹿児島県薩摩川内市の九州電力川内原発。3号機の建設計画がある

 政府はGX推進に伴い、原発依存低減の方針を事実上、転換した。GX基本計画でも次世代革新炉の開発・建設が盛り込まれている。

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 GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法が今年5月、参院本会議で可決・成立した。原子力に関しては、①脱炭素とエネルギー安定供給のために原発を利用、②運転開始30年を経過した原発は10年ごとに原子力規制委員会の認可取得(規制強化)、③20年間の原発運転延長は原子力規制委員会の審査や裁判所の運転差し止めなどによる停止期間を除外、④「使用済燃料再処理機構」の業務に廃炉関連を追加──の4点だ。

 他方、岸田文雄首相は昨年から、原発の新増設と次世代革新炉の研究開発にも取り組む考えを明らかにしており、今年2月10日に閣議決定したGX基本方針に、次世代革新炉の開発スケジュールが盛り込まれた。

 世界を見渡すと、原発の新増設に大きく二つの流れがある。一つは、既存の原子炉(軽水炉)の延長として、安全性と効率性を高めた発電容量100万キロワット以上の大型炉。もう一つが、同30万キロワット以下の「SMR(小型モジュール炉)」だ。日本では短期的には大型炉の新増設、SMRは中長期を視野に考えられている。

 だが、日本ではすでに4基の新型炉の増設が検討、あるいは計画されてきた。いずれもAPWR型(改良型加圧水型原子炉)とよばれるもので、出力は150万キロワット級。日本原子力発電(原電)の敦賀原発3、4号機新設、九州電力の川内原発3号機新設、関西電力の美浜原発の建て替えの各計画だ。

 現在の原子炉は、一般的にBWR型(沸騰水型原子炉)とPWR型(加圧水型原子炉)がある。福島第1原発はBWRで、PWRは関電や九電などが導入している。BWRを改良したABWR型は、すでに東電柏崎刈羽原発6、7号機など数基が導入されている。

 大型炉では他にも仏フラマトム社のEPR(欧州加圧水型原子炉)があり、PWRのバージョンアップ型で安全性向上と大型化を実現したもの。しかし、安全対策などの問題から建設は難航している。2005年に着工したフィンランドのオルキルオト原発3号機は、運転開始が今年4月だ。07年に着工した仏フラマンビル原発3号機は現在も工事中だ。

注目を集めるSMR

 この他の大型炉は、米ウェスチングハウス社が開発した新型PWRの「AP1000」がある。この原子炉は、原子炉格納容器(原子炉を覆う容器)の天井に水のプールを設置し、事故時にプールから水が落ちる仕組みだ。原子炉が電源喪失しても冷却ができる。AP1000も約20年前に概念設計を終えていたが、初号機は中国で建設が始まり18年に稼働。米国で建設中のAP1000は、今年ようやく臨界(発電可能状態)に至った。大型炉に前向きなのは、EPRを開発したフランスや韓国ぐらいしかなく、米国、英国、カナダで…

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